目次
- ○ポリフェノールだけではないカカオの力
- ○体にいい腸内細菌を増やし大腸がんを防ぐ可能性も
-
ポリフェノールだけではないカカオの力
カカオの健康成分は、血糖値下げに効果のあるカカオポリフェノールだけではありません。最近では、便通改善効果が期待されるカカオプロテインにも注目が集まっています。チョコレートの便通が改善効果に気づいたきっかけは、カカオポリフェノールを研究する過程で、1日25gの高カカオチョコレートを食べて便通が改善したという声が複数あったからです。この効果は、カカオポリフェノールの働きだけでは説明がつかず、カカオのタンパク質であるカカオプロテインの存在が浮かび上がってきました。カカオプロテインは特殊な構造をしているため分解されにくく、小腸では消化吸収されません。そして大腸まで届き、便の素材になったり、腸内細菌のエサになり、腸内フローラの菌のバランスを変化させるのです。すると、腸のぜん動運動が活発になり、便通が改善します。臨床試験でも高カカオチョコレート25gを2週間食べたグループは、排便回数が1・5倍以上、排便量は2倍以上に増えたのです。カカオプロテインをとると排便回数と排便量が増えた
緑:高カカオチョコレート:n=16
青:ホワイトチョコレート:n=15
試験食品摂取と便量の変動(平均値±SE)
試験食品摂取と排便回数の変動(平均値±SE)
排便回数が週平均4回以下の20~50才の女性を対象に、カカオ72%の高カカオチョコレート25gを2週間毎日食べてもらったところ、排便回数は1.5倍以上、排便量は2倍以上に増えた
(株)明治と帝京大学の共同研究「チョコレート摂取による腸内環境改善効果の探索的研究」報告書より
-
体にいい腸内細菌を増やし大腸がんを防ぐ可能性も
高カカオチョコレートを毎日25g食べると、フィーカリバクテリウムという腸内細菌が増えることもわかっています。フィーカリバクテリウムは、ビフィズス菌や乳酸菌に続く善玉菌として注目されており、長寿の人の腸内に多く存在するといわれています。フィーカリバクテリウムが素晴らしいといわれる理由の1つは、「短鎖脂肪酸」を作ること。短鎖脂肪酸は、大腸の上皮細胞の増殖や、粘液の分泌、水やミネラルを吸収するためのエネルギー源になるなどさまざまな働きを担っています。つまり、大腸を健康に保つために必要不可欠な存在なのです。また、腸内の有害な菌の増殖を抑制したり、腸のぜん動運動を促進するなど、腸内環境を整えるさまざまな働きを果たしています。また、フィーカリバクテリウムが生み出す短鎖脂肪酸の1つである酪酸は、腸粘膜のエネルギー源となり、腸壁を荒らす炎症を予防するので、大腸がんの抑制にも効果を発揮します。70%以上の高カカオチョコレートをとるだけで、こんなにいいことずくめの効果が得られるのであれば、試してみるほかありません。1日25gを目安に食べれば、きっとよいお腹の変化を感じられるでしょう。ぜひ試してみてください。短鎖脂肪酸の働き
腸のぜん動運動を促進
腸内を善玉菌がすみやすい弱酸性に保つ
腸粘膜のエネルギー源となる
炎症性サイトカインの抑制(抗炎症作用)
大腸での水・ナトリウム・カリウム・マグネシウムの吸収を促進
肝臓での脂質合成を抑制し、コレステロールを下げる
古賀先生のプロフィール
1985年、東京大学農学部農芸化学科卒業。94年、理学博士取得。2012年より現職。食品科学、植物病理学、応用微生物学を専門とし、植物ホルモンの生合成経路、植物の病害抵抗性機構、微生物の生産する繊維加工用酵素など、幅広い分野の研究に携わる。現在はカカオタンパク質やセラミドなどの機能性食品素材の研究を行っている
高カカオチョコ健康レシピ
PART2 1日1片からの高カカオチョコでさまざまな不調が解消するより
チョコレートの明暗を分けるのはカカオの含有量。「チョコは糖尿病の敵」「ダイエットだからチョコは我慢」は大間違い。実は、カカオ分70%以上のチョコレートは、血糖値・ヘモグロビンA1cを下げ、肥満を防ぐ優秀食なのです。いつ、どのくらい、どう食べるのが効果的かを生活習慣病治療の専門医が詳しく解説しています。また、雑誌など各メディアで、糖尿病をはじめとした生活習慣病対策のレシピを提供している栄養士が考案した、毎日おいしく食べられるレシピを豊富に紹介。