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結婚前と結婚後に性格が変わったと感じてしまう理由

結婚相手を選ぶとき、男性の言動を自分の中の「好き」「嫌い」と照らし合わせて、相手がその要望に適っているかを重要視する人もいるだろう。「友達が多く社交的な人が好き」「お酒をよく飲む人が好き」「食事中にこういうことをする人は嫌」など、人それぞれ好みは違う。けれど「好き」「嫌い」のポイントがもし結婚後、大幅に変わるものだとしたら? その好みに沿った選び方に、意味がないとしたら─?

下田美咲

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目次

  1. ○妻になったら夫に何を要求したくなるか
  2. ○交際中は好きだった彼の言動
  3. ○妻だからこそ嫌なこと
  4. ○性格や扱いが変わったわけではない
     
    • 妻になったら夫に何を要求したくなるか

      これは私(下田 美咲)自身、結婚してみて目からウロコが落ちたことなので、結婚未経験の人には必ず知らせておきたい。
      結婚前に「本当にこの人は結婚相手に相応しいのか?」ということを調査するのは、すごくムダ。自分とその人が結婚してうまくいくかどうかは、結婚してみないと絶対にわからない。結婚前にあれこれチェックをしても、その情報は結婚した時点で有効期限切れとなる。
      なぜかと言えば、まず第一に、その人の夫バージョンの立ち居振る舞いは結婚後にしか見ることができない。「彼女」というのはよその人であり、二人の仲がどれだけ深まって近づけた気がしていても、彼が見せてくれる顔はあくまで外面だ。よその人が相手だからこそ(一時的なことだ、と思うからこそ)できるサービスもあり、家族じゃないのだから「そこまでできない」という線引きも、たくさんある。
      男性の持つ「家族」の定義や、「家庭」への腹のくくり方には、かなり個人差がある。でもその手の哲学は、基本的に内に秘められているものなので、パッと見だったり、仕事ぶりや遊び方だったり、普段の対応や基本的な性格(真面目、チャラい、神経質、適当)などを見てもわからない。育った環境が影響しているパターンは多いけれど、どう反映されるのかは個性があるので予測が難しい。
      「家庭」への責任感が強い人だと、恋人時代は全然そうでもなくても、夫になったら意外としっかりする。また、恋人付き合い(週に何度か数時間会う)程度であれば、よく出来た男を演じられたけれど、生活となるとずっとは演じてもいられないから、夫になった途端にボロが出てきてキャラ変するというパターンもある。
      友達が自分と過ごしていない時間に誰に会って何をしていようと関係がないけれど、恋人になるとそこに「それはダメ!」や「あいつに会われるのは嫌!」という思いが出てくるように、他人に対する許容範囲や要求の設定というのは、その関係性によって変わる。
      どの男の人も、彼女に対してと妻に対してでは、許容範囲や要求が変わってくるけれど、その人の妻に対してのそれは、実際に妻になってみない限り目の当たりにできない。
      「友達」と「恋人」以上に、「恋人」と「夫婦」というのは別次元の関係で、差がある。だから友達から恋人になったときよりもずっと、結婚後の許容範囲や要求は、恋人時代とはかけ離れたものになる。
      そして人の態度というのは、許容範囲や要求によって、すごく変わる。つまり、結婚してみないとわからないことが多すぎる。
      何よりもわからないのが、妻になった自分が夫にどんなことを要求したくなってくるのか、だ。これが結婚してみないと本当にまったく読めない。だからこそ、どうしたって婚前チェックは穴だらけになってしまう。
      新しい要求が出てくるときというのは、セットで許せないことも増えてくる。
      私は結婚後「え、私って、こんなこと望むんだ……」「え、私って、こんなことが許せないんだ……」と数え切れないほど思った。結婚生活には「はじめて思うこと」がたくさんある。「まさかこんな気持ちになるとは」「相手を見る目にこんな視点が生まれるとは」の連続。
      よって、結婚前に相手のことをリサーチしても、その人が自分との結婚に適している相手なのかは測れない。だって自分がどんな妻になるのかを知らないのだから。
    • 交際中は好きだった彼の言動

      結婚前はそこが「いい♡」と思っていたのに、結婚後はそこが嫌になり「やめて」と言うようになったことがある。食事の仕方だ。同居をして彼の食事を作ることが日常になると、私の要求の方向性に変化が出た。
      結婚前の私は、彼の食事の仕方をすごく気に入っていて、彼との食事デートが好きだった。どこが良かったかと言えば、彼が食事中にほぼ一言も喋らないところ。
      彼は飲食店で会話をしない。オーダーを終えたら即、ゲームをするか、漫画を読み始める。食べるときも黙って食べているか、場合によってはゲームを続行したまま食べている。とにかく、喋ろうという気が一切ない。彼にとって食事デートはコミュニケーションの意味を持っていなくて、本当にただ食べることを目的としている。
      私に美味しいものを食べさせよう、お腹いっぱいにしてあげよう、満足するように面倒を見ようという姿勢はあり、大概彼の方が先に満腹になり、私の方が長い時間かけて食べるので、そんな様子を彼はゲームをしながら適度に確認し「もっと食べる?」「あとは何がほしいの?」「まだ食べたいんでしょ」などと展開を促す役割はする。まだあまり喋れない子どもに食事を与える親のように。
      しかし、一般的な男女のような華やいだ会話をしようとはしていない。
      私は長年、食事デートが苦手だった。美味しいものを食べるのは好きだけど、美味しそうなリアクションをするのは面倒くさいし、食べたものへの感想を述べた方がいい空気も面倒くさい。
      そしてまた私は、会話をすることが好きではない。でも、食事デートには通常、会話が付きものだ。食べ物が来るまで何らかの会話をしたり、食べ終わってからお店を出るまでも何らかの会話をしたり、会話必須な場面が多い。それが嫌なので基本的に食事デートは避けて生きてきた。
      その点、彼との食事は面倒くさくなくて気が楽で快適だった。私にとっては、まさに良いとこ取りで「こんなにも会話をしないで一緒に食べられる相手がいるだなんて‼」と思ったし、今もそう思う。
      夫とは飲食店でまったく会話をしない、という話を人にすると「面と向かっていて、会話をしなくても気まずくないのか」と訊かれることが多いのだけど、その件に関しては彼が終始ゲームをしているおかげで気まずくない。
      会話をしなきゃ、と思いながらも話題が見つからず、沈黙になっているという空気ならば気まずいだろうけれど、この場合は飼い犬といるような感じで、喋らない相手だという大前提があるから沈黙が気まずいという概念がない。
      それに、目の前で退屈そうにボーッとされたら気を遣うけれど、彼は楽しそうにゲームをしている。おかげで、こちらとしても彼に気を遣わずに本などを読んで食事が届くのを待てる。そして食べることに集中できる。
      過去、男性と食事をした際に相手が先に食事を終えてしまい(あるいは、ランチとかだと、こちらのものが先に来てしまい)食べている様子を一方的に見られる、みたいなことが多々あって、私はそれもすごく苦手だったのだけど(人の視線を感じながらの食事ほど心地悪いものはない)、その点、彼は常にゲームの方を見ているから、私はいつだってとても伸び伸びとした気持ちでゆったりと長々と食事ができる。
      結婚前の私にとって、彼のゲームをしながら食事をするクセは長所であり利点だった。
    • 妻だからこそ嫌なこと

      しかし結婚後、そこに変化が表れた。
      私が作った食事をゲームをしながら食べられることには、ストレスを感じたのだ。彼がゲームをしながらでもわりと本気で味わっていることは知っている。「どんな味なんだろう!」とワクワクしながら入ったはじめてのお店でもゲームをしながら食べている様子を何度も見てきたし、「ここ本当に美味しいんだよ‼」と力説をしながら連れて行ってくれたお店でも、ゲームをしながら咀嚼をしていた。
      彼は食べる物のグレードでゲームをしたりしなかったりするわけではないし、ながら食いは彼にとって、その食事を軽視することにはなっていない。それは理解している。
      だから単に聖徳太子的なことなんだろうと思う。ゲームをしながら、目は他のものに集中しながらでも、口の中のものをしっかり味わえているのだろう。「あ、ゲームしてたから、何食ってたか全然わかんなかった」というタイプではないのだろう。私の価値観ではありえないけれど。
      コンビニのパンやファーストフードを食べるときには、携帯を見ながらとか、ながら食いをしちゃうこともある。でも、味わって食べたいときはその他のありとあらゆる情報を遮断して味に集中したい。「そうしないと味がよくわからないもん」と思う。
      でもそれは私が一度に複数のことができないタイプだからで、彼はそうじゃないのだろう。
      それに彼は、どちらかと言えば私以上に味わって食べるタイプの人ですらある。まだ妊娠する前に二人で焼肉へ行ったとき、私はビールを注文したけれど、彼はジュースを頼んでいて「美味しいお肉を食べるときにアルコールを一緒に飲みたくないんだよね。味がわからなくなるから」と言っていた。食べることや味への関心が低いわけではない。
      だから、聖徳太子的なことなのだろう。ゲームをしながらでもテレビを見ながらでも、味はしっかりわかるし「俺は普通にちゃんと食べている」という認識だからこそ、私の手料理を食べるときにゲームを並行しても問題がないと思ったのだろう。
      しかし私は嫌だと感じた。他人が作った料理への感想はどうでもいいが、私の作ったご飯に関しての感想は知りたい。私はこの先ずっと彼の毎日の食事を用意していくのだから、後学のためにも味覚を把握したいのに、そんなふうに何を考えてるのだか全然わからない顔で食べられてしまうと困る。
      それに虚しい。その食事を用意するのに使った時間と気力の分だけ、虚しい気持ちになる。「美味しい」という顔が見たいがために、栄養だけで言えば別に毎日同じ味付けをしたっていいところを、昨日や一昨日とかぶらないように工夫を凝らしているのに、視線は画面に釘付けだし、左手で画面をスクロールしてるし、何なんだ、という気持ちになる。私はすごくあなたのことを想ってこの食事を用意したのだ。それを感じ取れるくらいに、これだけに集中して食べてくれないと嫌だ。他のことをしながら適当に口に運ぶなんて、ひどい。そう感じた。なので「やめて」「ゲームしながら食べないで」と言って、怒ったし?った。
      彼からしてみれば「え、どうして。いつもやってることなのに、え、なんでいきなり?」という状況だっただろう。すごく驚いていた。
      こういうことが結婚後にはたくさん起こる。「前と言ってることが違うじゃん」「前はそんなこと言わなかったじゃん」ということが。
    • 性格や扱いが変わったわけではない

      結婚前には言わなかったことを結婚後に言うようになると「結婚したことで性格が変わった」「扱いが変わった」と感じがちだけれど、そういうことではない。
      結婚をすると新しいシチュエーションが増える。結婚前とは違う角度での関わり方をするようにもなる。それに伴って新しい要求や、許せなくなることが生まれる。そういう仕組みだ。
      だから今だって、外食でのながら食いは大歓迎。別にお行儀とかそういうことを言っているわけじゃないから、買ってきたものや、彼が作ったものや、デリバリーなら、どう食べていても何も思わない。
      私の作ったご飯を食べるときのみ、ながら食いをされると虚しいだけ。その食べ方だと、「作った甲斐がない」と感じるから作りたくなくなる。「明日からも作ってほしいなら、ながら食いはしないでね」ってだけ。
      うるさいことを言うときほど「性格は変わっていないし、扱いも変えてないから!変わったのはそこではなくて……」ということを、くれぐれも言い添えるようにしている。

そうだ、結婚しよう。

下田美咲

毎日新聞出版

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気鋭の恋愛コラムニストが予想外だった自らの結婚、妊娠を通してつづる幸せな結婚を呼ぶ非常識の哲学。cakesで大人気連載中「下田美咲の口説き方」の書籍化!アラサー未婚女子に放つ、痛快エッセイ。

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