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オリオンビールの牙城にもクラフトビール旋風!一件の酒屋が乗り出したクラフトビール造り

クラフトビールとは、各地の醸造主によって手作りされた地ビールのことです。ビジネスとして、町おこしとして、各地で作られているクラフトビール。そこにはそれぞれの物語がありました!
今回は米軍キャンプも近く、異国情緒あふれる沖縄市内にある通称・「コザ」にある酒屋のクラフトビール造りについて、ご紹介します!

友清哲

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目次

  1. ○酒屋の2階がブルーパブにリニューアル『コザ麦酒工房』
  2. ○コザ初の地ビール「ビッグビーチ」
  3. ○沖縄らしい地ビールを
     
    • 酒屋の2階がブルーパブにリニューアル
      『コザ麦酒工房』

      オリオンビールの牙城(がじょう)と言うべき沖縄にも、クラフトビールブームの波は到来している。全国から多様なビールを取り寄せて提供するビアパブが増え、新たなマイクロブルワリーもいくつか登場している。
      米軍キャンプに近い立地で、「コザ」の通称で親しまれる沖縄市内の一角にも、今とびきり元気なブルワリーが脚光を浴びている。2年前からビールを造り始めたばかりの、コザ麦酒工房だ。
      大きなロゴが目印の、コザ麦酒工房。地元客に加え、最近はここを目指してコザを訪れる観光客も増えているとか

      大きなロゴが目印の、コザ麦酒工房。地元客に加え、最近はここを目指してコザを訪れる観光客も増えているとか

      現在はだいぶ落ち着いているようだが、ひところはペイデー(米兵たちの給料日)ともなれば、街全体が夜通し活気を失わず、異国情緒あふれる不夜城(ふやじょう)と化すのが常であったコザ。この街で、親子2代にわたって営まれてきた「とおやま酒店」の2階フロアで、日夜ビール造りに励んでいるのが、店主の大浜安彦(おおはまやすひこ)さんだ。
      「うちの酒屋はワインに力を入れていて、僕もワインアドバイザーの資格を取り、酒屋の一角でワインの立ち飲みをやったりしていたんです。ある時、これを目当てにやってくるお客さん向けに、海外のビールを少し入れ始めたところ、アメリカ産のIPAに出会って衝撃を受けました。それまで飲んでいたピルスナータイプのビールとは、味も香りもまったく違う。どんどん興味が膨らんで、あちこちの地ビールを飲みまくっていたところ、海外にはマイクロブルワリーやブルーパブといった業態が浸透していることを知りました。その気になればこういうビールを自分で造ることができるというのは、実に夢があるなと感じましたね」
      もし、コザでビールを造ったら、一体どのような味に仕上がるのだろう。そんな好奇心が、やがて具体的なモチベーションへと育まれ、大浜さんは本土のブルワリーで修行を始める。そして、ちょうど自社の2階のテナントに空きが出ていたことから、ここを改装してブルーパブにする構想を持ち始めるのだった。
      果たして、2014年の7月にまず、ビアバーとして店をオープン。それから少し遅れ、同年12月に醸造免許が下り、晴れてクラフトビール造りに取り組み始めることに。
      とおやま酒店の店内。地下フロアには膨大な数のワインが揃えられている

      とおやま酒店の店内。地下フロアには膨大な数のワインが揃えられている

    • コザ初の地ビール「ビッグビーチ」

      それにしても、コザという独特な雰囲気を漂わせる街の人々に、こうしたブルーパブはどのように受け止められたのだろうか?
      「バーでもなく、居酒屋でもない見慣れぬ形態ですから、最初はピンと来ない人が多かったようです。それに、『コザビールって一体何なんだ?』と、けっこう物珍しがられました。でも、地元の方を中心に、よそにはない自家製ビールが飲めると知ってもらえると、少しずつリピーターが増えていきましたね」
      一方で、こんなこともあった。
      「うちの酒屋はオリオンビールと代理店契約を結んでいますから、僕がビールを造ると言い始めた時には、やはりオリオンさんの社内が少々ざわついたようです(苦笑)。ただ、ビール醸造を禁じる規約があるわけではありませんし、何よりオリオンビールが造っているピルスナーと、うちが造るようなビールは競合しない確信がありました。結局、一切のお咎めはなく、今のところうまく共存できています」
      こうしてささやかに物議を醸すのも酒販店という立場ならではと言えるが、ともあれコザ麦酒工房は順調にスタートを切った。
      現在、ラインナップは6種類。そのネーミングを見ているだけでも、大浜さんが心から楽しみながらビール造りに取り組んでいる様子が窺える。
      たとえば、記念すべきコザで生まれた最初の1品は、「ビッグビーチ」と名付けられたクリームエール。これは沖縄で盛んなビーチパーティーを意識して、夏の海辺で飲める爽やかなビールを目指して設計されたもの。商品名は「大浜」の英訳だ。
      つづいて仕込んだIPAには「エイサーIPA」の名を、ペールエールには「三線(さんしん)ペールエール」の名をと、観光客が大喜びしそうなセンスが続き、メニュー表を眺めているだけで思わずクスリと笑いがこぼれる。「空手黒帯スタウト」に至っては、「単に黒ビールの色とこじつけただけで、深い意味はありません(笑)」と言うものの、インパクトは上々。看板商品のひとつとして人気を博している。
      かくして、コザに地ビールが誕生し、着々とその存在感を高めていくのだった。
      秀逸なネーミングの、「空手黒帯スタウト」。思わず写メりたくなること請け合いだ

      秀逸なネーミングの、「空手黒帯スタウト」。思わず写メりたくなること請け合いだ

    • 沖縄らしい地ビールを

      コザ麦酒工房の母体である「とおやま酒店」の店名は、もともと親戚筋の屋号で、実質的な創業者である実父に続き、大浜さんで2代目にあたるという。
      先代の頃には、造り酒屋として機能していた時期があるそうで、沖縄海洋博覧会の開催に合わせてハブ酒を仕込んで売っていたことも。
      「それがこうして、僕がビールを造り始めたというのは、なんだか歴史が繋がったような感じがしますよね。だから今度は、ハブビールを造ろうか、なんて話もしているんですよ(笑)」
      そうでなくても、沖縄はオリジナリティあふれる資源の宝庫だ。持ち前の発想力で、今後どのような琉球地ビールが登場するのか、興味は尽きない。
      「まだ、ようやく6種類出来上がったばかりですからね。これからもっともっといろんなタイプのビールを造っていきたいと思っています。薬草系をはじめ、地元の素材ももっと使ってみたいし、ここでしか飲めないビールを編み出していきたい。……ただ、僕にビール造りを教えてくれた師匠からは、『無理して地場のものを使おうとすると失敗するぞ』というアドバイスもいただいているんです。ネタに走り過ぎず、ビール本来の味を大切にしなければいけないという意味として、肝に銘じています」
      ちなみにこの取材の最中、夏に向けた隠し玉として大浜さんが明かしてくれたのは、「タイフーンIPA」だ。言うまでもないことだが、夏は沖縄にとり、台風が猛威をふるう時期でもある。せっかく来たのに荒天で外へ出られないという観光客は、せめてこのビールで喉を潤して帰れば、いい思い出になるかもしれない。
      大浜さんはどこまでも意欲的だ。現在は限られたキャパシティをやりくりし、タンクが空いたら次を仕込むことの繰り返し。順調に増えているファンと、次々に湧き出るアイデアに、早くもこのスペースでは手狭になりつつあるのが実情のようだ。
      「現在はまだ外販もしていませんから、ここに飲みに来ていただくか、あるいはビアフェスなどのイベントで飲んでもらうのがメイン。本業は酒屋なので、やはり遠からずボトル売りはやってみたいですね」
      イベントにはとりわけ積極的で、都合が許せば全国のビアフェスに出店する。本来、コザでしか飲めないビールを味わうチャンスであり、フリークはぜひ目を光らせておいてほしいところだ。
      さらに今年2月には、地元コザで「KOZAクラフトビールフェスタ2016」を開催し、盛況を得た。これは修行を積んだブルワリーの兄弟弟子たちが、毎年集まって実施する研修会に合わせて企画したイベントだそう。本土はまだ冷え込む時期であっただけに、「たぶん、日本で一番早いビアフェスだったんじゃないですかね」と大浜さんは言う。
      「基本的には気軽に飲んでもらうことが一番だと思っています。高価になりがちなクラフトビールを、普通使いのビールとして味わってほしい。そのうえで、僕が造るビールがコザへ来る目的のひとつになれば、これほど嬉しいことはないですね」
      こうしてコザの街には今、新たな彩りが加えられようとしている。沖縄旅行の一環で、そのプロセスに立ち会うのも一興だろう。
      大浜さん自ら店頭に立つ。カウンター越しにタップが見られ、その壁の向こう側が醸造室になっている

      大浜さん自ら店頭に立つ。カウンター越しにタップが見られ、その壁の向こう側が醸造室になっている

日本クラフトビール紀行

日本クラフトビール紀行

友清哲

イースト・プレス

日本の南国でも活気づく琉球発クラフトビールの胎動より

今日のビールは今日だけの味!最高の一杯を求めて西へ、東へ… クラフトビールブームと言われる昨今、数多の種類が出回るようになりました。ヨーロッパ産の伝統的なものから、日本の酒造メーカーが作ったもの、地域活性化のために作られた変り種などなど……。本書は特に「日本のクラフトビール(手作りの地ビール)」にこだわって全国各地のブリュワリーを訪ね歩いた記録です。北は北海道から南は沖縄まで、各地で出会った手作りビールとその誕生秘話を知ることは、「私の逸品」を見つけるヒントになるのではないでしょうか。

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