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- ◯赤えんどうといんげん豆
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赤えんどうといんげん豆
赤えんどうは不思議な豆だ。朝昼晩のおかずとして、赤えんどうと食卓で出会うのは極めて稀だ。大豆や小豆はもちろん、黒豆や青えんどうという豆達に比べてもかなり少ない。そんな赤えんどうも和菓子や甘味になると、主役も脇役も幅広くこなす。例えば「みつ豆」は寒天との二枚看板で、餡子が加わる「あんみつ」では脇役にまわり、豆が増えれば「豆かん」として一躍主役に躍り出る。かたや和菓子では落雁(らくがん)に使われるなど黒豆や青えんどうを越える知名度がある。これまで筆者が訪れた店舗の約八六パーセントの店舗が赤えんどうの豆大福だ。そんな餅と豆達が広げる輪の外で無関心を決め込む豆の存在に気付く。いんげん豆である。いんげん豆といえば、大福豆や手亡(てぼう)は白餡として小豆に次ぐ知名度がある。花豆や金時豆に至っては甘納豆には欠かせない。また白餡は思い通りの着色が可能で、抹茶餡や黄味餡や味噌餡などに応用される。見た目が重要な和菓子の彩りに無くてはならない役割を持つ豆である。日常においても煮豆などで食卓に並ぶ事も多いのだが、それが豆大福となると驚く程に関わりを持たずにいるのだ。たまには白餡として中身になる事はあるが、豆餅となると皆無である。これまで伺った都内の和菓子店でもいんげん豆を用いた豆餅を見た事はない。それは生食では中毒を起こすので十分な加熱が必須な事と関係があるのだろうか。その事が朝生菓子たる豆大福から、いんげん豆を敬遠させる要因なのかも知れない。ならば、かのこや甘納豆など加工品で用いる事も出来る。しかし現状は未だに出会えない事が不思議で仕方がない。味や風味の相性は白餡で実証済みで大きさも黒豆と変わりなく問題はない。新たな豆大福の方向性は、この豆が示してくれるかもしれない。そんな期待を抱かせる位の歴史と実績が、いんげん豆にはあると確信している。
東京豆大福五〇の覚書き
定番の赤より
庶民のスイーツ「豆大福」。ひとくちに豆大福と言っても、かたち、豆の種類、豆の位置など、実は千差万別。いま食べておくべき「東京の豆大福」をオールカラーで紹介。“マメに暮らして大きな福を招く”との願いを込めて、東京の豆大福に特化した初めてのガイドブック。ツキをまるごといただけますよ! 豆大福を食べてしあわせになろう!