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赤坂周辺で買える極上豆大福「松月」「青野」の住所と営業時間

現在では多くの大使館があるほか、テレビ局はじめ多くの企業がひしめき合う華やかな街として有名な赤坂は歴史をたどればお屋敷町でもあり、歴史が息づく街でもあります。
そんな赤坂で創業100年を超えて今なお人気を博す老舗の名店たちの豆大福をご紹介します。

イワイサトシ

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目次

  1. ◯和菓子司 赤坂 松月
  2. ◯赤坂青野 赤坂本店
     
    • 和菓子司 赤坂 松月
      赤坂@東京メトロ千代田線

      和菓子司 赤坂 松月

      東京メトロ千代田線「赤坂」駅1番口から一ツ木通りを左へ。「赤坂見附」駅方面へ歩くと左手に、浄土寺へ至る参道が見えてくる。大提灯の入り口をすり抜け、恐る恐る参道を進んでゆく。すると右手に見えてきた建物に『和菓子司 赤坂 松月』の看板を見つける。
      創業大正六年の名店が作る「豆大福」は品名を「まめ福」という。大きさ五二ミリ程で、子どもの手で作られた雪玉を二分した様な半球体は真っ白な片栗粉に赤えんどうが盛り上がり、其処彼処(そこかしこ)に見た目の味わいを醸(かも)している。垣間見える種皮の淡い黒が広い白に僅かばかりの影を描き、起伏に富んだ造形の一端を担っている。隙間なく塗された片栗粉は細かく朧(おぼろ)な輝きを放ちまめ福を覆っている。餅の白さに温もりを感じる見目である。
      手にすれば少々片栗粉が零(こぼ)れる。指先に伝わる感触は掬い取られた泡玉の様に柔らかで、片栗粉越しからも儚(はかな)くも口当たりの優しさが伝わってくる。堪らず齧(かじ)り付けばその衝撃で大量の片栗粉がボロボロと勢いよく落ちてくる。その瞬間にあまりにも柔らかく滑らかで儚げな口当たりに驚けば次の瞬間には向こう側から漂う小豆の香りが、優しく鼻先を掠(かす)めて嗅覚を刺激する。その間も波打つ餅に弾かれた片栗粉達が牡丹雪(ぼたんゆき)の様に眼下へ降り積もってゆく。このまま全ての片栗粉が剥がれ落ちてしまいそうな勢いだ。
      顎に伝わる感触はさながらとろみが強い“葛湯”に口を付けた様で、まさに固体を保つ限界に挑んでいる。そこには老舗の英知が注ぎ込まれている。ユルリとした餅の嚙み口をみれば小さな泉が湧いて出たかと言う程に潤いが保たれている。断面のあちこちで、珠の様な光沢が輝く。灰黄緑がかった色味には透明感が加わり、清々しささえ感じる程だ。柔らかさは更にスーッと糸の様に伸びて、きめ細かい粘度も十分に備えている。加えて確かなコシも備え、強かな嚙み心地の中からは米の甘さと白玉粉の香りが滲み出してくる。
      ふんだんに混ぜ込まれた赤えんどうは嚙み口でも水玉の斑点模様を描き上げる。嚙む度に続々と口内へなだれ込み、丸い体系を頰の内側に擦り付けては静かな主張を繰り返す。瑞々しさに加えて、豆だからこその香りに塩気が相まって全体を旨味に変えてゆく。しかしこの柔らかな餅の中で、よくぞここまでの豆の数を盛り込まれたものである。
      対して、つぶ餡から湧く小豆の風味は豊かだ。シャキシャキとした小豆の皮が放つ、軽やかな歯応えも申し分ない。サッパリとして抑えの効いた甘さが口内の隅々まで染み渡る。上品さに奥ゆかしさが重なり、餅との相性を高めている。潤いと食感のバランスの良さもあって、まるで飲み物の様にツルツルと食べ進んでしまう。もしかしたら餅の柔らかさが餡子を上回っているのではないか、とまで考えさせる口当たりである。
      大多数の人は餡子が柔らかいものだと思っているだろう。しかし、このまめ福は想定を超え、極上と呼べる柔らかさを実現している。その極限下にあっても赤えんどうにコロコロの食感に舌が楽しく遊ぶ。そして、食べ終わって片栗粉がほんのりと残った指を見てハタと気づいた。この繊細な餅を保持するには大量の片栗粉が必要不可欠なのだ。手に取った時、形が崩れるのをギリギリで抑えるのが、片栗粉の重要な役割である。それが食感をまとめ上げ、滑らかな口当たりを決定づける。一度まめ福を口にしたなら、今後に食する餅の柔らかさの上限は、大きく引き上げられる事だろう。
      片栗粉のデンプンが、餅や餡子にさらなる“とろみ”を与える。そこに新たな扉が開かれ、まめ福だからこその個性が活きづいている。前代未聞の柔らかさがその真骨頂であることは特筆しておきたい。

      ●住所 東京都港区赤坂4-3-5

       営業時間 [月~金]10:00 ~ 19:00 [土]10:00 ~ 18:00 定休日 日・祝

    • 赤坂青野 赤坂本店
      赤坂@東京メトロ千代田線

      赤坂青野 赤坂本店

      東京メトロ千代田線「赤坂」駅7番口から赤坂通りを右へ進む。そのまま赤坂小前交差点までゆけば角に『赤坂青野』が見える。道は一本、迷わずにゆける。静かな店頭で「豆大福」がプラスチックのトレイに身を埋めている。全長約五六ミリの立派な躯体(くたい)が大きくなだらかな弧を描いて丸く膨れ上がって見せる。その姿を例えるなら白く小さなコック帽だ。
      その豆大福を覆う餅は灰青色をしている。何故だか包むではなく、被るという優しい質感が全体からは感じられた。外見からして餅が薄めだ。豆が薄く伸びた餅を透過し、黒いシルエットを浮かべる。その豆を餅が確実に覆い隠す。その率はほぼ一〇割で、外に飛び出た豆は皆無だ。その上にうっすら覆い隠す片栗粉が表層に浮き出た豆達の輪郭を際立たせる。
      手に取ると豆の突起は指を掛けるのに最適である。指の間に於いて豆大福の形状維持に多大な効果を発揮している。指先が押し入った箇所は少し窪み、静かな弾力を返す。すぐに内部にある餡子が、しっかりと存在感を放つ。次に重量感である。卓に置けば“ドン”と音をたてる。そんな個性の結晶たる豆大福を、横っ面からひと口パクリ齧(かじ)り付く。食感は豆大福にしては餅感が少ない。上下の顎に伝わるのはデンプン質や寒天に似た震える感触がある。例えば薄い“くず餅”が餡子をとり巻いていると思しき食感だ。サクサク切れる歯応えとフルフル震える口当たりが口の中を取り巻き伝播(でんぱ)する。
      ふと嚙み口を眺めれば想像通りの薄さの餅が緩やかに餡子を覆う。透明度が高い餅には豊富な潤いを証明する細かい光沢が密集している。粘り気は低く、餅に固有の伸び感も少ない。餅間で結束が弱く、クニクニ嚙み続けるとその回数分だけ、フルフルの食感の中で細かくなる。とはいえその感触も歯が餅を貫通するほんの僅かな間の話である。すぐに餡子が口中の全神経を総べてしまう。全力で小豆感を醸し出すつぶ餡から、シッカリとした甘さが迫ってくる。
      密な食べ応えとは裏腹に後味はサッパリしてクセがない。何しろ僅かな水気でボッテリ重く、舌に圧し掛かってくる食感が、この甘いカタマリには備わっている。柔めに炊かれた煮豆を砕き、練り上げた様な素朴な口当たりが味覚を揺らす。ホロホロ崩れる様な舌触りの柔らかさ。奥ゆかしい餡子は、しかし濃密な風味や皮の歯応えまで、全てが強い個性となる。
      その隙間を縫って異質な歯応えで豆達が自己主張をする。食感から漂う独特の雰囲気には明らかに赤えんどうとは違う舌覚えだ。これこそが威風堂々とした存在感で大納言小豆。食感と風味を艶(あで)やかに発揮している。シッカリした歯応えの豆は全て、餅の中に行儀良く挟まって潜んでいた。その嚙み口をよくよく見ればフルフル震える薄い餅の間に、大納言様が包まれて潜んでいらっしゃる。普通の豆餅なら“餅の中”だが、この豆餅は確実に“餅の間”にある、という訳だ。もしや薄い餅に、大納言様が挟まれているのではないか。その老舗和菓子屋が駆使する細かい仕事の前にして、驚愕と共に感動が湧き上がる。とにかく手が込んだ豆大福なのである。
      いつしか脳裏には豆大福と掛け離れた、別の何かが浮かび上がって来た。モッタリと水気が少ない餡子を包むのが、粘度が低い“皮”を形成する素材。まさしく、これは限りなく「饅頭」に近づいた豆大福といえる。餡子を何かで包むというのは和菓子の基本的な共通項である。そんな両者が表裏一体の関係という事に改めて気づかせてくれた。皮が餅系の素材なので“大福”。“豆”を仕込めば豆大福。当たり前の様でいて和菓子の持つ根源的汎用性を改めて垣間見た気がする。

      ●住所 東京都港区赤坂7-11-9

       営業時間 [月~金] 9:00 ~ 19:00 [土] 9:00 ~ 18:00 定休日 日・祝

私が幸せな東京豆大福五〇の覚書き

東京豆大福五〇の覚書き

イワイサトシ

東京ニュース通信社

定番の赤変わり豆六色より

庶民のスイーツ「豆大福」。ひとくちに豆大福と言っても、かたち、豆の種類、豆の位置など、実は千差万別。いま食べておくべき「東京の豆大福」をオールカラーで紹介。“マメに暮らして大きな福を招く”との願いを込めて、東京の豆大福に特化した初めてのガイドブック。ツキをまるごといただけますよ! 豆大福を食べてしあわせになろう!

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