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【FP執筆】住宅ローンで失敗しないためにやってはいけない組み方

住宅ローンを利用する際、金利は低く、期間は短く、そして積極的な繰上返済を行うことで、総支払い額を抑えることができます。そのため、ローン選定時に借入期間をとにかく短くしようと考える人は多いかもしれませんが、借入期間を短くすることは本当に正しいのか、風呂内亜矢さんの「その節約はキケンです 」よりご紹介します。

風呂内亜矢(1級FP技能士)

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目次

  1. ○住宅ローンは短く組むとキケン
  2. ○こう考えれば安心です!
     
    • 住宅ローンは短く組むとキケン
      人生には不確定要素が多すぎる

      住宅ローンを利用する際、金利は低く、期間は短く、そして積極的な繰上返済を行うことで、総支払い額を抑えることができます。そのため、ローン選定時に借入期間をとにかく短くしようと考える人は多いかもしれませんね。
      例えば、3000万円の住宅ローンを年利1.5%で借りる場合、35年間で返済すると総支払い額は約3858万円になります。これが、25年間で返済すると総支払い額は約3600万円となり、約258万円の差が生まれます。
      これだけの差が生まれるのですから、返済期間を短くしたくなるのも無理はありません。
      しかし、返済期間を短くしようとすると、当たり前ですが月々負担する金額は重くなります。
      先ほどの例で見てみましょう。
      月々の返済額は、35年ローンで約9.2万円ですが、25年ローンだと約12万円と負担が毎月約3万円、ふえることになります。10年短くなる代わりに、毎月の負担が3万円アップするのです。
      この毎月約3万円の支払いの増加が、後々、家計を圧迫してしまう可能性があります。
      これは、かなりキケンです。
      住宅ローンを借りる時は、現在の収入を基準に考えることが多いです。共働きの場合だと、妻の収入もアテにして、返済計画を立ててしまいがちです。
      しかし、夫婦どちらもそろって、現在と同レベルの収入を今後もずっと得られるとは限りません。子供を授かった場合には、産休・育休を取得することになるでしょうし、子育て中は時短勤務になることもあります。夫婦がフルタイムで働いたとしても、子供が大学生になる頃には学費の存在感が大きくなります。
      子供がいない夫婦の場合、そういう心配はありませんが、実家の両親の介護が必要になるかもしれません。
      夫婦のどちらかがリストラされたり、転職を考えるという可能性もあります。
      単身者であれば、親の介護やリストラ、転職といった事態に、自分一人で対応することになります。夫婦の片方が仕事をして片方が家庭のことや節約で貢献する。そういった調整もできません。
      このように、人生には不確定な要素が多くあります。住宅ローンを組んだ時点では、その後数十年間の生活の変化など、予想のしようがないのです。
      したがって、住宅ローンの返済期間を短くするために月々の返済額をギリギリまで高くしてしまっていると、いざという時に身動きがとれなくなってしまう恐れがあります。その月の生活費をまかなうために、住宅ローンよりも高い金利でお金を工面しなければいけない事態が出てくるかもしれません。「住宅ローンの借入期間をできる限り短くする」という節約方法は、慎重に選択する必要があるのです。
       おすすめなのは、月々の返済額について「負担のない範囲で」短い期間はどのくらいか、を研究することです。
      3000万円の住宅ローンを、年利1.5%で借りている山田さん(仮名)の場合で見てみましょう。
      月々の返済額は、35年返済だと約9.2万円、33年返済だと約9.6万円、31年返済だと約10・1万円になります。
      一方、総返済額はそれぞれ約3858万円、約3805万円、3753万円です。
      つまり、ローンを2年短くすることで総返済額は50万円程度削減することができますが、月々の返済額は約4000~5000円増えます。
      山田さんは現在33歳で、定年退職が65歳。ローンを31年返済にすると、定年退職する年に完済することができます。しかも、返済総額を50万円減らすことができる。これはたしかに魅力的ですが、ローン返済が月10万円を超えるのは難しい、月9万円台であればゆとりを持って払えるのに、と考えました。
      そこで、月々の返済額を9万円台に抑えられる33年返済で計算してみました。この場合、65歳になる年に、まだ約227万円のローンが残ります。65歳までにその分を別途準備する必要がありますが、毎月の決まった負担を約5000円軽くすることができるのです。
      返済の途中でゆとりが生まれたら、前倒しして繰上返済を行いましょう。当初の「返済総額50万円の差」を小さくすることができます。
      山田さんのケースですと、33年返済で借り入れを行い、返済開始10年後に170万円繰上返済を行うと返済期間を2年間短くすることができます(期間短縮型の繰上返済を選んだ場合)。
      結果的に、完済するタイミングは31年返済を選んだ場合と同じになりますが、月々の返済額は少ないままなので、繰上返済資金も含めた総返済額は約3745万円になります。これは、繰上返済をせずに最初から31年で返済した総額約3753万円よりも少ないです。
      もっとも、毎月の負担は5000円軽くなっていますが、繰上返済の資金170万円はそれだけでは間に合いません。毎月平均で約1万4000円を貯蓄することになりますが、毎月10・1万円の返済が確定している状態に比べると、自由度が大きく変わります。

      住宅ローンは短く組むとキケン

      佐藤さん(仮名)は、夫の年収が約600万円、妻の年収が約200万円の時に3000万円の住宅ローンを組みました。当時、34歳同士のご夫婦です。
      3000万円を年利1.5%、25年返済で借りると月々の返済額は約12万円です。手取収入を月額の平均に直すと夫が約40万円、妻が約15万円。つまり、世帯の手取収入は月平均で約55万円。これだけあれば、月々12万円はゆとりを持って返済できそうです。
      ところがその後、妻が仕事をやめることになりました。出産のためです。
      夫の収入だけでもなんとか返済は可能ですが、生まれたばかりの子供を抱えながらお金を切り詰めるのは大変で、共働きだった頃の貯蓄で補てんしながら乗り切りました。
      子供が小学校に通い始めると、妻もパートを始め、年間100万円ほど収入を得ています。貯蓄もできるようになってきましたが本当にわずかで、「今後、子供の学費がふえる時期がきて月々約12万円の返済が続くと思うと気が抜けない」と話していました。
      返済期間延長や、住宅ローンの借換えも検討しましたが、当初の返済期間が基準になることが多く、期間を引き延ばせる金融機関はなかったとのこと(その時の収入などに応じて延長ができる金融機関が見つかる場合もあります)。
      佐藤さんご夫婦が返済期間を30年とあと5年長く設定していたら、月々の返済額は約10.4万円。つまり、月々約1.6万円、負担が軽くなっていたわけです。
      マイホームで支払うお金にはローン返済だけでなく固定資産税などもありますから、ローン負担が毎月1.6万円軽くなれば、ずいぶん楽だったのではないかと考えられます。
       返済期間を30年にした場合、当初完済を目指していた60歳の退職時点でのローンの残高は、約598万円。その分は退職までに準備する必要がありますが、返済開始後、25年かけて598万円を準備する方が、目一杯の返済額のまま目の前の収入減(今回だと妻の出産による退職)に対応するよりも、取り組みやすかったのではないでしょうか。
      もちろん、大前提としては、収入や支出のバランスに見合った住宅ローンを借りることが大切です。そして借りる金額が同じ場合、短い期間での返済を確定してしまわない方が苦しまずに返済できる可能性があります。
      つまり、「短期間」にこだわらないことがおすすめです。
    • こう考えれば安心です!

      ローン返済の総支払い額を節約することと、今月の家計収支を健全化させることは両方大切。総支払い額ばかりに注目して今の生活を苦しめないように、今の生活ばかりを重視して総支払い額を増やさないように、相互に気をつける必要がある。

その節約はキケンです

風呂内亜矢

祥伝社

1章 王道節約術のキケンより

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