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ナルコレプシーの症状と原因とは【博士(理学)執筆】

日本では電車の中で眠っている人を見かけることが非常に多いですが、世界的にみてこれは非常に珍しいことなのだそうです。それは単に治安の良さから安心していられる、ということだけではなく、日本人は眠くなりやすい遺伝子を持っている人が多いのだとか。それはどのような遺伝子なのでしょう。生物学者の著書で確認してみましょう。

長沼毅(理学博士)

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目次

  1. ○日本人は眠りがちな民族
     
    • 日本人は眠りがちな民族

      普通に寝て、普通に起きていても日中眠くなる人がいるかもしれません。
      私(長沼毅)は仕事柄、よく海外へ出張します。海外に行ってみると、日本では普通の光景が、とても奇妙に思えるものです。その中でも顕著なものの一つに、電車内での居眠りがあります。
      日本の電車内の光景を見てみると、多いときにはシートに座っている半分以上の人が眠っています。残りの人はスマートフォンをいじっています。中にはスマートフォンを持ったまま眠っている人もいます。これだけの数の人が電車の中で眠っている国は、日本以外にないと言ってもいいでしょう。
      もっとも、海外から見れば「ワーカーホリック大国・日本」です。神経をすり減らしながら働いている勤勉な日本人の仕事の疲れを象徴している光景なのかもしれません。あるいは治安面の特徴もあるでしょう。日本では、これだけの人が電車で眠っていても、荷物がひったくられる経験をした人はほとんどいないでしょう。世界的に見れば「奇跡的に平和な国」に違いないのです。海外では公共の場で眠っていれば、何をされても文句は言えません。どこに泥棒や犯罪者がいるかわからないのが、多くの外国の日常だからです。
      しかしこの奇妙な光景の原因を遺伝子に求めると、また見え方が変わってきます。私たち日本人の少なからぬ割合は、「眠りがちな体質」という特徴を、遺伝的に持っているのです。それは「ナルコレプシー」という、日中に突然、強烈な眠気に襲われる睡眠障害に象徴されます。
      眠りが浅くなり、夢や金縛りを体験する回数が増える一方で、自分で眠るタイミングをコントロールできなくなります。
      欧米だと2000人に1人、日本人は1000人に1人とされていますが、これはあくまで診断書が出るような症例の数であり、もっと拡げてその傾向がある人まで考えると、欧米の数十倍に達するかもしれません。
      ナルコレプシーは遺伝子によって決定づけられる症状であり、先天的なものだと言われています。日本人に多い症状でもあることから、日本人特有の遺伝子にその原因があるのかもしれません。
      ナルコレプシーを遺伝的特徴として持っている人は、昼間に抗いがたい眠気が襲ってきて、ガクッと眠りに落ちてしまいます。長時間に渡って集中力を維持しなければならない仕事には明らかに「不向き」です。
      また、その様子を他人が見ていると「居眠りかな?」としか思えません。この症状には周囲の理解が得られないという辛い点があります。
      ナルコレプシーだと診断されると、まず航空機のパイロットになることができません。さらに電車の運転士にもなれませんし、日常の車の運転にも制限がつきます。診断書をもらえば会社で理解を得やすくなるかもしれませんが、その分、社会生活に制約を受けるというリスクを取らなければならないのです。
      もちろん、ナルコレプシーというのは遺伝的な症状ではありますが、逆に、昼間に眠くなるからといってナルコレプシーとは限らないでしょう。
      ただ、人によってどれだけの睡眠が必要かというのはそれぞれの身体的な個性ですから、自分がたくさん眠らなければ体が持たないのか、そうでないかを理解しておくことは大切だと言えます。
      どうしても昼に寝てしまう。それならば、「そういう体質です」と、自分でも周囲の理解を促すための努力をしてみてはどうでしょうか。「私は眠りがちな体質だから、眠いときには少し休憩させてほしい。その代わりに私は得意なことでみなさんを助けようと思う」と、自分がしてほしいこと、自分が周りにできることを表明するわけです。
      それでも周囲の理解がどうしても得られない場合は、別の場に移動するか、働き方を変えてしまいましょう。たとえば自分で時間を好きに使えるような、フリーランスでできる仕事などに就けば、それが最大限にパフォーマンスを発揮できる働き方ですから、本人としても、周囲としてもいいことです。
      電車のおやじドミノも遺伝子のせいかもしれない

      電車のおやじドミノ

      POINT

       日本人はわかっているだけでも他国の2倍、「眠りがちな遺伝子」を持っている。

       自分に必要な睡眠時間は、根性ではなく遺伝子で決まっている。

       眠い体質はどうにかなるものではないので、他のことで頑張ろう。

考えすぎる脳楽をしたい遺伝子

長沼毅

クロスメディア・パブリッシング

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