目次
- ○「空気が読めない人」を理解する
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「空気が読めない人」を理解する
お酒を飲まないことへの理解が進んだ一方で、精神疾患への理解はまだまだ発展途上なのかもしれません。日本人に特に多い疾患に、「アスペルガー症候群」があります。この精神疾患の特徴は「空気が読めない」こと。アスペルガー症候群の人は、何気ない質問に対する答え方に特徴があります。たとえば「あなたはどこから来たのですか?」という質問に対して、「家から来た」と答えるのがいいのか「◯◯町」がいいのか、「地球上の緯度経度」で答えればいいのかがわかりません。激しい症状になると、突然「キレる」人もいます。低評価や否定的な評価を与えられたとき、アスペルガー症候群の人は、叱責や批判と同じととらえる傾向があります。その結果、キレるのです。アスペルガー症候群は、遺伝子によってもたらされる疾患であることがわかっています。これもまた、実際に病院で診断された人や、診断は受けていないけれど実際に発症している人、あるいは診断が下りないような軽度の人などがいると思います。ただ、空気が読める、読めないというのは、その人の性質だととらえたほうがいい、と私(長沼毅)は思います。気質というのは生まれ持っているものです。よって、もしも同僚やクラスメイトの中に「空気を読めない」人がいたとしても、「遺伝子が原因なんだから仕方ないよね」という寛容な気持ちで接してあげてください。また、もし自分が空気を読むのが苦手だと思うなら、それも卑下することなく自分の遺伝子からくる性格なのだと知っておくべきです。知っておけば、対策が打てます。自分が「それ、嫌いだ」「ダメだよ、そんなの」と何気なく言ってしまおうとするとき、ちょっと工夫して「どちらかというと苦手だな」というように、少しぼかした表現にすることができるかもしれません。この工夫があるかどうかで、周囲の反応は大きく変わります。人の性格自体も、その多くは遺伝子の支配下にあります。遺伝子ベースでの相互理解があって初めて、よい関係になれることもあるはずなのです。ちなみに俗説ではアスペルガー症候群の人には天才が多いとされていますが、そもそも天才というものは一定の確率でしか存在しないので、アスペルガー症候群だからといって必ずしも天才の素質を持っているわけではありません。
考えすぎる脳楽をしたい遺伝子
第1章 人は悩むようにできているより
現代人は、脳ばかりが暴走して、身体の限界を超えることをやってしまうバグを抱えているのです。本書では、「科学界のインディー・ジョーンズ」が、過酷な探検と研究のなかで見つけた、『ストレスなく、悩まずに生きる方法』を紹介します。