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【医師執筆】漢方薬の正しい飲み方
漢方薬の名前には、~湯、~散、~丸とついているものがあります。これは、漢方薬の剤形をあらわしています。それぞれ、湯剤、散剤、丸剤と言い、漢方薬は、剤形によって、その飲み方が異なることがあります。この記事では、様々な漢方薬の飲み方について紹介します。
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目次
- ○漢方薬の飲み方
- ○湯剤
- ○散剤
- ○丸剤
- ○漢方エキス剤
- ○冷たくして飲む漢方薬もあります
- ○良薬は口にうまし?
- ○子どもが漢方薬を飲みたがらないときは?
- ○漢方薬は食前に飲むもの?
- ○副作用はある?
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漢方薬の飲み方
漢方薬の名前には、葛根湯、当帰芍薬散、八味地黄丸のように、~湯、~散、~丸とついているものがあります。これは、漢方薬の剤形をあらわしています。それぞれ、湯剤、散剤、丸剤と言い、漢方薬は、剤形によって、その飲み方が異なることがあります。 -
*湯剤
〝湯剤〟は、刻んだ生薬を組み合わせたものを、30~60分間グツグツ煮てつくります。煮出して成分を抽出するもので、〝煎じ薬〟のことです。煎じるので手間がかかります。本来、この煎じ薬は温かい状態で飲みます。このときの薬の味や香りが重要です。漢方では〝良薬は口にうまし〟といいます。患者さんに最適な漢方薬は、その患者さんにとっては美味しいと感じる場合がけっこうあるのです。 -
*散剤
〝散剤〟は、生薬を粉末にして、混ぜあわせたものです。散剤には〝散ずるに通じ、急病を解散・分散させる〟という言葉があり、すぐに服用が可能で、速効性も期待できます。飲むのは簡単で、煎じる手間も要らないのですが、薬の量が多くなるので、一度に服用するのが困難な場合もあります。この場合は、お湯やお水で少しずつ服用します。 -
*丸剤
〝丸剤〟は、生薬を粉末にして混ぜ、ハチミツなどを加えて丸く練り固めたものです。丸剤には、〝緩に通じ、緩かん徐じょに病気を治す〟という言葉があり、薬効が緩やかで持続性もあると考えられています。また、ほかの剤形よりも長期保存ができます。丸剤もお湯やお水で服用します。ところで、漢方薬には〝酒服〟といって、お湯のかわりに温めた日本酒で飲む方法もあります。たとえば、アンチエイジングや高齢者によく処方される八味地黄丸、冷えが強い人に処方される桂枝茯苓丸、婦人科系の病気に処方される当帰芍薬散などです。これは、アルコールが、生薬の油脂成分を溶かし込んで吸収率をあげるのではないかと考えられています。また、アルコールの働きで、胃腸へのもたれを防ぐためとも言われています。 -
*漢方エキス剤
現在、医療用として使われている漢方薬の多くはエキス剤です。エキス剤とは、生薬を煎じた液からエキス成分を抽出し製剤化したものです。たとえば、煎じ薬が豆を粉に引いてお湯を注いで抽出するドリップコーヒーとするならば、エキス剤は粉末にお湯を注ぐだけで飲めるインスタントコーヒーといったところです。グツグツと煎じる手間がかからないし、服用も簡単です。携帯にも便利ですし、長期に保存することもできます。このような漢方エキス剤を処方されたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。皆さんは、どのようにして飲んでいますか?エキス剤の名前に〝~湯〟とついているならば、その漢方薬はもともと煎じ薬。だから、煎じ薬と同じようにして飲むのが効果的です。飲み方は、100~120mlくらいのお湯に溶かして服用します。あるいは、前記の量の水とエキス剤をコーヒーカップなどに入れて、電子レンジでチンします。必ずラップをしてください。ラップが面倒な場合は、温度を60℃に設定します。これなら吹きこぼれないでしょう。なお、お湯に溶かしたエキス剤が、底に沈んでいたらこれもしっかり飲みましょう。エキス剤は、顆粒や細粒の剤形にするときに乳糖(牛などの乳に含まれている糖からつくった甘味料)を使っていて、これが底に沈殿していることがあるからです。ここにも薬の成分が含まれているので、必ず飲んでください。とくに、冷え症や風邪の初期の人は、エキス剤をお湯に溶かして飲むことで体温が上げるのを助け、代謝を活発にし菌やウイルスへの抵抗力を上げます。 -
*冷たくして飲む漢方薬もあります
漢方薬をお湯で飲むことをすすめてきましたが、例外的に冷たくして飲む場合もあります。ただし、エキス剤は冷たい水に溶けにくいので、少し手間ですが、熱いお湯で溶かしてから、冷やして飲みます。どのようなときに飲むか、説明しましょう。一つめは、吐き気が強いときです。温かいものは吐き気が出やすいので、漢方薬を冷たくして服用します。つわりのときに使用する、小半夏加茯苓湯などがそれにあたります。二つめは、漢方医学でいうところの熱性の病態が強いときで、たとえば精神的な興奮が強い、あるいは炎症反応が強い場合などです。具体的には、血圧が上がって真っ赤な顔をしていたり、アトピー性皮膚炎で皮膚が真っ赤になって痒みが強いなどの症状があるときに、漢方薬の黄連解毒湯などを服用する場合は、この方法を用います。三つめは、口の中の痛みが強いときで、これは、熱いものを飲むと痛みが増強してしまうからです。口内炎や歯周病のときに使用する漢方薬、立効散の場合は、口の中をよくすすいでから飲み込みます。 -
*良薬は口にうまし?
〝良薬は口に苦し〟ということわざがありますが、漢方医学では〝良薬は口にうまし〟と考えています。漢方薬には特有の味と香りがあり、これには重要な治療的な役割があります。患者さんに合った漢方薬では、患者さんはその薬を美味しいと感じることが多いからです。もしも患者さんが「漢方薬をまずく感じる」と言った場合は、治療を担当している医師は悩みます。その漢方薬がその人に合っていない可能性があるからです。しかし一方で、まずくてもがんばって患者さんに飲み続けてもらっていると、症状がよくなり、薬をまずく感じなくなり、美味しいと感じるようになることもあります。これは不思議です。 -
*子どもが漢方薬を飲みたがらないときは?
「漢方薬がまずくて飲めない」と、子どもが言うことがあります。お湯に溶かした漢方エキス剤は、多くの子どもたちが飲みたがりません。こういうときは、漢方薬をオブラートに包んで飲みます。オブラートも進歩していて、現在では袋オブラートという便利な商品があります。三角形の一辺が開いている袋状のもので、このなかに薬を入れて飲みます。 -
*漢方薬は食前に飲むもの?
漢方薬は食前、あるいは食間に飲みます。西洋薬は食後に飲むものが比較的多いのですが、これは、消化器系の副作用を減らすために、食後に内服するようにつくられているためです。漢方薬は、消化器系の副作用が出ないように、生薬が組み合わされています。そのため、薬の成分がよく吸収されるように、空腹時、あるいは食間に飲みます。ただし、地黄や麻黄という生薬が含まれているときには、消化器系の副作用が出ることがあるので注意が必要です。また、消化器系が弱い人の場合は、食後に飲んだほうがよいときがあります。 -
*副作用はある?
漢方薬は、西洋薬に比べて副作用が少ないと言われていますが、薬が合っていないと、食欲不振、むかつきなどの副作用が生じる場合があります。少しでも違和感を感じたら、すぐに医師に相談してください。