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【医師執筆】発達障害なのか個性なのか?その違いとは

診断基準すべてが社会生活上の「障害」と言いきることはできないでしょう。たとえば「こだわり」。マイナスに見れば「融 通の利かなさ」ですが、プラスに見れば「妥協を許さない態度」です。「融通の利かなさ」は困りますが、「妥協を許さない態度」なら障害ではなく、いい個性と受け取られることもあるでしょう。この記事では、障害と個性の区別は所属する社会によって様々なことについて紹介します。

高貝 就

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目次

  1. ○障害なのか個性なのか、その違いはどこにある?
     
    • 障害なのか個性なのか、その違いはどこにある?

      診断基準すべてが社会生活上の「障害」と言いきることはできないでしょう。たとえば「こだわり」。マイナスに見れば「融通ゆうづうかなさ」ですが、プラスに見れば「妥協だきょうを許さない態度」です。「融通の利かなさ」は困りますが、「妥協を許さない態度」なら障害ではなく、いい個性と受け取られることもあるでしょう。また、たとえ話や皮肉ひにくが理解しにくいという特徴も「純朴でストレート」と評価される場合もあるのではないでしょうか。では、障害と個性の区別はどこにあるのでしょうか?この疑問に対する答えは一つではありません。それはその子どものいる社会の平均からのかけ離れ具合で測られるといってもいいかもしれません。
      自分の例をあげて恐縮ですが、私は身長が160㎝ちょっとしかなく、成人男性のなかでは小柄なほうです。けれども、サイズにあった服は普通に売っていますし、電車やバスを利用する場合も不自由を感じることはありません。医師になってもう少しで20年になりますが、身長のために仕事上で不便を感じたことはありません。
      ところが、大学院生時代にオランダのロッテルダムへ短期留学をしたときは事情が違いました。オランダは世界一の長身国で、オランダ人男性の平均身長は183㎝と、日本人男性の平均身長よりも10㎝以上も高く、私よりも20㎝も高いからです。治安もよく、何とも楽しい日々だったのですが、一つだけ不便だったことがあります。それは、男子トイレの小用便器の位置がとても高い位置にあり、背伸びをしなければ用を足すことができなかったことです。たとえがトイレの話で恐縮ですが、これには苦労しました。
      つまり私の身長がオランダの社会の平均から離れていて、不便が生じるレベルだったということです。けれども日本ではそのような苦労をしたことはありません。日本の社会の平均からは、そこまではかけ離れていないからです。つまり、ある状態を障害と見なすかどうかは、所属する社会や文化によって決まるということです。言いかえれば、社会のしくみを改善することで障害をもつ人たちの苦労を軽減できるということです。
      オランダの話をもう少しだけ続けます。週末の休日に留学先で知りあった講習会仲間と日帰りの小旅行に行き、そのなかで海辺の堤防の見学に出かけました。オランダは治水のための堤防が発達しています。私は堤防マニアというわけではありませんが、ぜひ見学したいと思っていました。この見学通路の天井の高さは170㎝ほどしかなく、その上、曲がりくねっていたので、オランダ人の友人たちは背をかがめながら苦労して通っていました。そのなかで私だけが姿勢を変えることもなく、らくらくと通ることができたのです。このときは背が低いことで有利なこともあるのだと感じました。このように平均値からかけ離れた特徴は、その環境次第で障害にもなればメリットにもなり得ます。このことは身体的な特徴だけでなく、精神的な特徴にも当てはまるものです。
      クリスマスキャロルの「赤鼻のトナカイ」は、赤い鼻をみんなから笑われていましたが、サンタクロースから暗い夜道を照らすのにその鼻が役立つと、ソリの引き役に抜擢ばってきされる歌です。約60年前に作られたこの曲は「誰もが適材適所で輝くチャンスがある」というメッセージで人びとの共感を呼んでいます。広汎性発達障害の特徴があっても、個性のレベルにとどまっている状態は「発達障害」というよりも「発達凸凹でこぼこ」と表現するほうがふさわしいのではないかと思います。この「発達凸凹」があることで社会で暮らしていく困難さ、すなわち「適応障害」があらわれれば、それを「発達障害」と捉えられるのだと思います。つまり、「発達障害」=「発達凸凹」+「適応障害」なのです。

       

      マイナスに見れば障害でも、
      プラスに受け止めれば個性。
      障害と個性の区別は所属する社会によってさまざま。

子どもの発達障害 家族応援ブック

高貝就

法研

「うちの子、理解されにくいかも……」「うちの子、学校になじめないかも……」。言葉としてはよく知られるようになった「発達障害」。ただ、障害の詳しい特性や、望ましい接し方、「療育」など支援の仕方など、肝心なことはまだまだ十分知られているとは言えません。大切なことは、周囲の方が「発達障害」について正しい知識を持ち、早いうちに子どもが抱えている困難感を理解して、その子が持っている伸びる力を発揮できるようサポートしてあげることです。本書は、発達障害を持つ子どもが、すこやかに成長し、将来自立していけるように、発達障害の基礎知識、療育や支援の受け方など、実践的で役立つ情報を児童精神科医師がやさしく解説し家族を応援します

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