目次
- ○治療のスタートラインに立たせることが大切
- ○健康を気づかっていることを伝える
- ○本人の気持ちに寄り添い別の視点からながめてみる
- ○家族の役割
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治療のスタートラインに立たせることが大切
子どもにネット依存症の疑いがあるときは、早期に治療を開始します。本人に任せては回復は困難です。実は子どもも心の奥底では、このままではダメだと思っています。しかしそれを自ら認めると、ネットを制限されてしまいます。それがわかっているので、自身の問題に気づきながらも認められないのです。これも依存症の特徴の1つで、「否認」と呼ばれる状態です。だから親に「ネットをやりすぎている」と指摘されると「そんなことない」と逆上してしまいます。専門家への相談や病院への受診を勧めても、素直に応じることはほとんどありません。 -
健康を気づかっていることを伝える
こういうケースで受診を促すには、「体調が悪いようだから一度医者に診てもらおう」「疲れがたまっているようだから検査してもらおう」などと、体調を心配しているということを前面に押し出して説得すると良いでしょう。ネット依存症の専門科のある病院では、血液検査、尿検査をはじめ、骨密度の検査、体力測定、脳波の検査、心理テストなど、さまざまな検査を行います。特にひきこもって不健康な生活を続けていた子どもは、こうした検査値に異常が出たり、他の同世代の子どもに比べて体力が衰えているという結果が出がちです。これらの検査をみると、はじめはふてくされていた子も、治療に前向きな気持ちになることも多いです。 -
本人の気持ちに寄り添い別の視点からながめてみる
では、治療を始めるにあたり、親としてどのように子どもを見守れば良いのでしょうか。少しでも早くネットをやめさせなければと、強制的にパソコンを取り上げたり、ネット回線を切断してしまう親がいますが、逆効果となるケースがあります。子どもは親の真意を受け入れられず、自分の大切なモノをいきなり奪われたと感じ反発します。また、ネットカフェなど他の方法でゲームをしようと考えます。脱ネット依存を目指すのであれば、次のことを心がけて接しましょう。●子どもにとってネットは重要な意味を持つということを理解する。●ネットの接続をいきなり切らない。切断する場合は話し合い、子どもが納得したうえで切る。●ネット以外の時間を増やして、ネットを使用する時間を減らすようにする。●子どもの良いところを認めて、ほめてあげる。親にとってはたかがネットでも、ネット依存症の子どもにとっては、それが全世界になっていることがあります。子どもが大切にしている世界であるということをまず認めて、子どもの心に寄り添う気持ちを持ちましょう。ただ遊んでいるだけに見えますが、何か深刻なトラブルを抱えていて、自分を守るためにネットに避難しているのかもしれません。挫折を経験して、自信を取り戻すための代償行為という場合もあります。ネットばかりしているから自分の評価は落ちているに違いない、こんな自分は生きている価値もないのではないかとさえ悲観している子もいます。ですから、「あなたは悪くないよ」と伝えるのはたいへん重要です。自分を変えていく勇気を持たせてあげましょう。
代償行為本来の願望や欲求が満たされないとき、他の形でそれを満たそうとすること。たとえば、現実の世界での人間関係がうまくいかないとき、ネットゲームやネット上のコミュニケーションで、代替的な満足を得ようとすることがある。 -
家族の役割
受診するように説得する「あなたの体が心配なのよ」と言うと、本人は受け入れやすい子どもの立場に立って考えるなぜ子どもはそれほどネットにのめり込んでいるのか、冷静に分析してみる●最近トラブルがなかったか●何か自信を喪失するような出来事がなかったか●寂しさや甘え、辛さをうまく表現できないのではないか言葉がけを工夫する●否定的なことは言わない●自分もやってみて、「このゲームおもしろいね。夢中になる気持ちがわかるよ」と子どもの気持ちに寄り添う●「あなたは何も悪くないよ」「よくがんばってきたね」と子どもを肯定する
ネット依存症から子どもを救う本
PC、スマホが普及するとともに、社会問題となっているネット依存症。ネット依存症は、オンラインゲームやSNSなどネットの使用状況が単なるネット、ゲーム好きの域を超えて、不登校やひきこもりなど、生活に支障が出るような状況になっている状態です。この状態が続くと、意欲の減退、言動の変化、さらには健康状態や成長にも影響することがあります。 本書は中高生の子どもを持つ保護者の方や教育に携わる方向けに、子どもをネット依存症にさせない、またネット依存状態に陥っている子を救い出す方法を、事例を紹介しながら解説します。