目次
- ○放置すると社会復帰が困難に
- ○ひきこもりが先にあるときはその原因を取り除くことが先決
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放置すると社会復帰が困難に
現在のところ専門家の間でも、ネット依存症についての見解は分かれています。ネット依存症は思春期に起こる一過性の問題にすぎず、放っておいても自然に良くなる、という意見もあります。もしそう考えるのであれば、ネット依存症は病気ではないということになります。しかし、現実問題として、何年も依存状態が続き、しだいにそれが固定化していくケースが多く見られます。自然に治ることはまれで、他の依存症と同じく、依存期間が長引けば長引くほど、回復しにくいこともわかってきました。5年も10年もひきこもってネットに没頭した後に、ようやく目が覚めても遅すぎるのです。その間、履歴書に書ける社会的活動が何もないので、就職活動も困難です。たとえ就職できても、対人経験が乏しいので苦労します。これは本人にとっても家族にとっても、非常に辛いことです。たかがネットと思うかもしれませんが、何年も依存状態が続くと、将来に大きな影響をもたらします。社会的にも経済的にも、健康面でも、支払う代償はあまりにも大きいと言えるでしょう。ですから、多くのものを失う前に、子どもの異変に気づき、治療を促さなければなりません。ほかの病気と同じように、早期発見、早期治療が回復への早道です。最初に子どもの変化に気づけるのは、学校の教師でも友人でもなく、ひとつ屋根の下で暮らしている家族です。子どもが怒るから、依存を認めないからといって、放置していてはいけません。ネット依存症は病気であるということを、しっかり認識しましょう。本人も心の奥底では「このままではいけない」と感じ、やめなければと葛藤しています。その瞬間を見逃さないで働きかけることが大切です。本人が問題を自覚できれば、「治したい」という意欲がわいてくるはずです。 -
ひきこもりが先にあるときはその原因を取り除くことが先決
ネット依存症のほとんどは、ネット依存になったためにひきこもっているケースです。彼らはオンライン上の人間関係を強く求めており、むしろ「人間関係依存」ともいえます。実際オフ会で、ネット上の仲間と会うこともあります。逆に、もともとひきこもりがあって、暇つぶしからネット依存症になるケースもあります。こういう場合は、ネット依存症の治療をしても、ひきこもりの原因を取り除かないと問題は解決できません。
ネット依存症から子どもを救う本
PC、スマホが普及するとともに、社会問題となっているネット依存症。ネット依存症は、オンラインゲームやSNSなどネットの使用状況が単なるネット、ゲーム好きの域を超えて、不登校やひきこもりなど、生活に支障が出るような状況になっている状態です。この状態が続くと、意欲の減退、言動の変化、さらには健康状態や成長にも影響することがあります。 本書は中高生の子どもを持つ保護者の方や教育に携わる方向けに、子どもをネット依存症にさせない、またネット依存状態に陥っている子を救い出す方法を、事例を紹介しながら解説します。