目次
- ・ナンピンは禁じ手ではない
- ・ギリギリまで引きつけることが大切
- ・ナンピンの注意点
- ・チャートでみるナンピンの例
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ナンピンは禁じ手ではない
「大きく勝つ」ために利乗せを活用するのに対し、「小さく負ける」ために、状況によってはナンピンも活用します。ナンピンというのは、「難平」と書きます。自分がもっているポジションに損失が生じたとき、同じ額で再度ポジションを増やすことで、最初のポジションに生じた損失の回復を容易にするのが目的です。しかし、ナンピンはそもそも自分のポジションが含み損を抱えた状態ですから、使い方を間違えるととんでもないことになります。読んで字のごとくポジションを「平らにする」のは「難しい」のです。トレンドが合っている(正しいエントリー)場合、ナンピンは有効ですが、間違ったトレンドに乗っている場合、ナンピンは逆効果となります。ですからナンピンは1回限り、トレンドが合っているなら損失を減らす、あるいは利益につながる可能性もありますが、損切りがついてしまった場合はきちんとすべて決済して仕切り直すことです。たとえば、80円で1万ドルの買いポジションを持ったとします。このときの損切りは200ポイントリバースの78円割れです。その後、1ドル=79円までドル安・円高が進んだとき、もう一度、そこで1万ドルを買えば、平均の買いコストを1ドル=79円50銭にすることができます。でもこのやり方は間違いです。そうではなく、ナンピンするなら損切りポイントの78円に限りなく近いところまで我慢するのです。たとえば78円15銭でナンピンしたとします。そして残念なことに損切りが77円95銭で付いたとします。その場合でも損失額は80円で買ったものを合計しても大して変わりませんし、これがつくようならトレンド転換とみて、戦略をドル売りに転換すればいいわけです。また、78円割れをみないで反発に転じた場合はエントリーが正しかった可能性が出てきます。80 円近くまできたらいったん逃げて作戦を立て直すなり、あるいは80円を超えてきたら利乗せで攻めることもできますが、経験則では80円の手前までしか戻らない確率のほうがやや高くなります。このようにナンピン自体は不遜なイメージが強く、FXの入門書では「ナンピンはすべてダメ」と書いてあることもありますが、使い方次第では有効活用もできるわけです。
ちなみに、FXの場合、必要証拠金に対して一定の率で損失が生じたら、その時点で自動的にロスカットしてくれるしくみになっています。しかし通常、強制ロスカットというのは、必要証拠金に対して8割前後の損失が生じた時点で実行されます。ということは、それが実行された時点で、持ち金は8割方減価していることになります。そこまで深手を負ってしまったら、まず立ち直ることはできません。
そのような目に遭わないためには、「上手な負け方」を会得することが大切になります。トレードは一発勝負ではありませんし、常に勝ち続けることもできません。勝ち負けを繰り返しながら、トータルで利益を残していくために、先ほど解説した利乗せと、このナンピンが重要なのです。 -
ギリギリまで引きつけることが大切
上手にナンピンするには以下の4つのポイントがあります。
•ナンピンするのは1回限り、上限でも最初のトレードで持ったポジションと同数分(トータルでレバレッジ10倍)だけにすること
•損切りポイントのギリギリのところまで引き付けてナンピンすること
•ナンピンしたポジションを清算する場合は、基本的にそれまでの損失分がチャラに近づいたところで諦めること。あるいはナンピンしたポジションも損切りとなる覚悟をすること。
というのは、前述のとおり、エントリーが正しければ、損切りがつかないことが多いものです。それに反してエントリーが間違っていた場合は、持ち値に近い水準まで戻っても利益にはつながらずに、結果的にはナンピンした分まで損切りする羽目に陥ることになります。このあたりの判断はポジションを持っている自分にしかできないのです。
•ナンピンしてもアゲインストの状態が続き、当初の損切りポイントに達してしまった場合は、すべてのポジションを損切りすること
とにかく、ナンピンを考えるという時点で負け戦ですから、心理的にもよい状態ではありません。ナンピンした後でその相場が戻ったら、いったん逃げてから仕切り直すほうが無難でしょう。相場はなくなるわけではありませし、チャンスはいつでもありますから、被害を最小限に留めて退却し、次の局面でいかに利益を挽回するかについては後で考えればよいのです。 -
ナンピンの注意点
ナンピンはリスクを伴うものです。安易に値ごろ感でやるべきではありません。
そもそも、ナンピンしたところで相場が止まるかどうかは、誰にもわかりません。ここに非常に大きなリスクがあります。
そういう事態を避けるために、先ほど記したルールが大切になるのです。
大切なことは、あらかじめ自分自身でしかるべき損切りポイントを決めておき、そこに達したらすべてのポジションを確実に損切りすることです。
次に、ナンピンを考える際には、中長期のトレンドに対して、どのようなポジションを持っているかによって対応が変わってきます。
たとえば、大きな流れがドル上昇トレンドだとします。この流れのなかでドルを買ったとします。この場合、多少下げたとしても、再び相場は元の水準に戻ってくる可能性が高いといえます。ですから、ナンピンするという戦術も十分に有効であると考えられます。
ところが、大きな流れが上昇トレンドのときにドル売り、すなわち逆張りで入った場合というのは、アヤを取りにいっているということです。だとすれば、ポジションが損切りポイントに近づいてきた場合に、再び戻ってくる可能性は低くなります。ですから、アヤを取りにいく場合は、逃げ足を早くするのが基本戦術で、ナンピンは極力控えるべきなのです。
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チャートでみるナンピンの例
図表1はナンピンのポジションが利益につながった例です。ドル上昇トレンドに乗ってドル買いポジションを保有中のチャートです。1月17日の高値は90.14。200ポイントリバースにしたがって逆指値は88円割れにあります。
1月23日の東京市場寄り付きは88.54。その後、続落したのを見て88.15に指値をしてナンピンします。
翌1月24日の足は大陽線となり、高値90.54まで上昇しました。
このように、トレンドに順張りの場合はナンピンが成功することも多くあります。
図表1 ●プロはいつどういう理由でナンピンするのか?図表2はナンピンして損切りとなった例です。ユーロ上昇トレンドに乗って103.69が持ち値のユーロ買いポジションを保有中です。1月14日現在の高値は120.13で、この時点での逆指値は200ポイントリバースにしたがって118円割れに設定中です。
1月16日に118円割れの逆指値が執行。この場合でも103円台で持っていたユーロ・ロングポジションの利食いとなりました。
200ポイントリバースしたので、翌1月17日の東京市場寄り付き117.81でユーロ売りに転換。この時点の損切り逆指値は前日116.47から200ポイントリバースする118.50超えです。日中118.40でナンピンしましたが、1月17日中に損切りポイントを超えてしまい、逆指値執行。当初のポジションで約70銭の損失、ナンピンしたポジションで10銭の損失確定となりました。
図表2 ●プロはいつどういう理由でナンピンするのか?
FXプロの定石
東京銀行時代に伝説の為替ディーラー・若林栄四氏の下で鍛えられ、外銀の為替部長など要職を歴任してきた本物のプロである著者が、自らが日常使っているスイングトレードのテクニックをわかりやすく体系的にまとめた初めての本。エントリーの方法だけではなく、ポジション操作(利乗せとナンピン)を有効に使って損小利大を実現し、利益を残していくのがプロ。本書では、これまではほとんど明かされることがなかった、その考え方とノウハウを解説。応用編としてプロだけが知っている「シドニー市場で毎朝サクッと儲ける法」「ドル/円相場の値動きのクセ」「マドは埋まるという経験則」など、即役立つTIPSも多数紹介。為替トレードの技術が確実に一段上達する“基本書”。