目次
- ○キレイな部屋より、帰りたくなる部屋を目指す
- ○離婚家庭に共通する「散らかり方」って?
- ○「キレイ好き&片づけ下手」カップルは要注意!
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キレイな部屋より、帰りたくなる部屋を目指す
先に、心地いい環境をつくることを目指しましょう、とお話ししましたが、自分の家、部屋というのは「自分が最終的に帰るべき場所」だと思うのです。たとえ、どこに旅立っても、どんなに疲れていても、そこに戻ったら気力も体力も回復して元気になれる場所、というような感覚でしょうか。日本の童話、たとえば「桃太郎」や「金太郎」をはじめとする昔話では、英雄が悪者と戦ったあと、宝物を持って故郷に帰りますよね。まさに「故郷に錦を飾る」という状態です。ヒーローもがんばったあとには、「お疲れさま! よく頑張ったね。ゆっくり体を休めてね」と言ってもらえる場所に戻るのです。戦って功績をあげるのには、戻ったときに自分をしっかりと迎えてくれる場所がある、という前提があるからだと思います。そして、自分が戻れる場所をつくることこそが、部屋づくりだと私は考えます。最近は、モデルルームのような、何もなくてスッキリした状態こそが「いい」部屋で、ちょっとでも散らかっていたら「ダメ」という認識が刷り込まれている人がとても多いようです。たしかに部屋がキレイなのはいいことですが、必ずしも「キレイであればいい」というわけではありません。私が片づけをお手伝いしたある女性は、まるでモデルルームのような部屋に住んでいました。インテリア雑誌の常連で、言ってみればみんなの「お手本」になるような部屋です。四季折々に部屋のイメージを変えて模様替えをするなど、インテリアにはかなり手をかけているようでした。ところが、その方には悩みがありました。「実は……部屋があまり好きではなくて。家に帰りたくないんです」と言うのです。みんなが憧れる部屋に暮らしているというのに、です。部屋にいたくないから、特に予定がなくてもわざと寄り道や外出をすることも多く、なるべく家の滞在時間が少なくなるようにしていると言います。みんなが憧れる部屋に暮らしていて、決して散らかっているわけではありません。むしろかなりキレイな部類に入るのではないでしょうか。にもかかわらず、自分の部屋が好きになれないのです。彼女は、「家にいても、なんだか落ち着かなくて……」と言います。聞けば、これまで自分が心地いいと思った部屋に住んだ経験が一度もない、ということでした。片づけの手掛かりになればと思い、部屋のこと以外の悩みも一緒に聞いてみると、恋愛関係がうまくいかない状態が長く続いていると打ち明けてくれました。「この人は……!」と思う相手と出会って、つき合うところまでいっても、しばらくすると、「なんだか思っていたのとは違う」と感じて、長続きすることなく別れてしまうようです。パートナーになかなか心を許せない、自分の本音を出せない、と言うことでした。過去にさかのぼって話を聞いてみると、こんなことがわかりました。彼女は、常に母親から「部屋はきっちり整えなさい」「誰に見られても恥ずかしくない部屋にしておきなさい」と言われ続けてきたそうです。そして、彼女は「部屋は常に人から見られる」という感覚で部屋の片づけをしてきたと言います。その結果、彼女の部屋は「人からいい評価を得られるかどうか?」が基準になっていました。他人から見てステキな部屋、他人が憧れる部屋を目指していたのです。その指標のひとつに「雑誌に掲載されること」がありました。雑誌で認められる部屋こそ自分の喜びである、と思い込んでいたのです。そこには、「自分が気に入った部屋かどうか?」「自分がくつろげる部屋かどうか?」という判断基準はありませんでした。そこで、私はこうお伝えしました。「周りの目は一切気にせず、自分自身が心地いいと思える部屋をつくってみませんか?」「人が認める部屋」をつくるのではなく、「自分自身が認められる部屋」をつくることを提案したのです。彼女には、「自分自身がどういう部屋にしたいのか?」を考えてもらうことにしました。部屋づくりで自分の思いとは違ったものを表現しているために、自分自身がしんどくなっているように私には見えたからです。それに、「自分がこうしたい」という思いが決まらないと、自分の望むようなパートナーとも出会えません。なぜなら、部屋は自分自身を表現する一番の場だからです。そこを偽っていては、本当の自分を相手に見せることはできません。その後、彼女は安心して自分の素が出せるような「自分らしい部屋」をつくることを心がけました。人から見た「ステキな部屋」ではなく、自分が本当に心地よい空間をつくるようにしたのです。部屋の壁はスッキリ見えるように、何も飾らないようにしていたのですが、自分の趣味に合ったポスターや、「見ていると気持ちが上向きになる」というものを飾ってみたそうです。それから、寝室やデスクまわり、浴室、トイレなど、ポイントに自分の「好き」をプラスしました。オシャレさはなくなりましたが、自分の好きなものに囲まれているので、安心感やワクワク感に包まれるようになったと言います。その結果、インテリア雑誌には載らなくなりましたが、彼女にとっては落ち着く部屋になり、家にいる時間が増えたといいます。かつてのように、意味もなく外出したり、寄り道したりすることもなくなりました。さらには、心を許せるパートナーと出会い、彼女の家で一緒に過ごすなど、今までにはない人間関係が生まれたのです。よく考えてみたら、彼女はインテリア関係の仕事をしているわけではないので、雑誌に載ったからといってそれが仕事につながるわけでも、お金になるわけでもありません。「それは単なる自己満足にすぎなかったのだ」ということに彼女は気づいたそうです。このように、たとえ雑誌に載るようなステキな部屋ではなくても、たとえ、少しくらい散らかっていたとしても、自分がくつろげる空間、「自分がこうしたい」という気持ちが反映されている部屋のほうが、暮らしやすいということです。自分が「こういう部屋がいいな」と思う気持ち、そして「家に帰りたい」と思える部屋づくりをどうか忘れないでください。 -
離婚家庭に共通する「散らかり方」って?
家族やパートナーなど、身近な人との関係がうまくいかなくて、心の中でモヤモヤが溜まっているときなども、部屋は荒れます。引っ越し屋時代には、離婚家庭や仲のよくないカップルの部屋を数多く見てきましたが、いずれも共通する点がありました。それが「荒れている」という点でした。「散らかっている」というよりも、「荒れている」という言葉がふさわしい状態です。服も散乱していますし、床が見えない場合も多いのです。いわゆる「汚部屋」ですね。どこにも行き場のないようなものたちであふれているのです。また、部屋の雰囲気がギスギスしているようなところがありました。それから、化粧品がなぜか食卓のテーブルの上に置いてあったり、歯ブラシがキッチンにあったりするなど、本来あるはずのないものがあるはずのない場所に置かれていて、なんとなくちぐはぐな印象を受けました。あるお宅では、こんなことがありました。引っ越し当日にうかがったのですが、玄関のドアを開けてびっくり!引っ越し準備がなんにもできておらず、床一面に服が散らばった状態だったのです。事前に送ってあった段ボールも組み立てられることなく壁に立てかかったまま。その状態に驚きながらも、次の仕事が控えているので、とにかく早く済ませることだけを考えました。本来は、梱包から引っ越し業者が担当する「おまかせパック」でなければ、ものが梱包された段ボールを運ぶだけですが、そうも言っていられません。段ボールを組み立て、ものを詰めて運ばせてもらうことにしました。次から次へとガンガンものを段ボールに入れて、トラックに積み込んでいきました。ふと見ると、寝室の床に服がこんもりと盛り上がっているところが。「これも全部運ぶのかあ。ずいぶん荷物が多いな……」と途方に暮れながら、荷づくりを続けていたときのことです。服の塊(かたまり)の中から「ガサガサ」という物音が……。「なんだろう? ゴキブリ? ネズミ? どちらも嫌だなあ。困ったな」とドキドキしながら立ち尽くしていたところ、服の山が突然動いて、中から出てきたのは、ゴキブリでもネズミでもなく……人でした!「わ~! なんか、人が出てきた!」と叫んだら、「それ、うちのオカンですわー」って。その家のお母さんが服の下に埋まっていたのです。おそらく、お母さんが床で寝ていたところに、上から服をぽんぽんと放り投げていったら、いつの間にかお母さんの姿が見えなくなり……、ということなのでしょう。これまで、数々の家を見てきましたが、まさか服の山から人が出てくるとは思いませんでした。とまあ、ここまでの例はなかなかありませんが、仲の悪い夫婦やカップルの家は荒れていることが多いのです。逆に、「離婚したい」と思っていた夫婦が、部屋を整えていったら関係が修復し、ヨリを戻したというケースもあります。部屋をキレイにしていくうちに、次第に相手のよさが見えてきたり、実は相手のことをきちんとわかろうとしていなかったことに気づいたりするのです。そして、お互いがお互いのことを思い合い、意見を言い合うようになったら意思疎通をはかることができた。最終的にはヨリを戻す結果に、ということもけっこう多いのです。このように、部屋は人間関係さえも左右する力があります。家族との仲が今ひとつだな、と思っている方、夫婦仲がちょっとギスギスしているな、と感じる方、一度、部屋を見てみてください。部屋を整えることで、関係性が変わってくるかもしれませんよ。ちなみに、離婚家庭の中には稀(まれ)ではありますが、「キレイすぎる部屋」というケースがありました。まるでモデルルームのようにものがビシっとキレイに置かれているのです。きちんとしすぎていて、1ミリたりともそれらを動かしてはいけないような、そんな妙な緊迫感があります。そこには、「生活感」というものが一切流れていません。あたたかみがないというか、部屋が生きていない感じがするのです。ですから、どこか寂しい印象を受けます。家族が生活するうえで必要な場として、部屋が機能していないようにも思えました。そう考えると、部屋はキレイであればいい、というわけではないのですね。住み心地のいい家、帰りたくなる家をつくることが大切だと私は思います。 -
「キレイ好き&片づけ下手」カップルは要注意!
何かしら問題を抱えているご家庭を見ていると、片方がキレイ好きで、もう片方が片づけられない、というケースがほとんどです。たとえば、ダンナさんの部屋はキレイだけれど、奥さんの部屋は荒れているとか、その逆もあるでしょう。そして、片づけられる人が、片づけられない人を責めてしまう。責めるから仲が悪くなるという構図が一番多いのです。キレイ好きの人には責めている感覚がないので、相手がなぜ怒り出したのかを理解できないといったところがあります。「え、なぜ急に怒り出したの?」と不思議に思うのですが、相手にしてみたら衝動的に怒ったわけではなくて、我慢に我慢を重ねた末の、積もり積もったものが火山の噴火のように吹き出しただけなのです。実際、キレイ好きの人の周りにいる家族がウツになるケースは本当に多いです。キレイ好きの人が「お前は片づけができない、片づけができない」と言い続けるうちに、家族は「自分は片づけができないんだ。片づけができない自分はダメなんだ」と頭の中に刷り込まれていきます。そのうちに、だんだんと自信を失い、「自分は誰からも必要とされていないんだ」と感じてしまい、最終的にはウツ状態になる、ということがあるのです。中には引きこもってしまう方もいます。キレイ好きの人にとって、「キレイにする」という行為は、言い換えると「汚いところを見つける」行為です。また、自分こそが法律なので、その考えを人にも当てはめてしまいがちです。だから、「自分が正しい。お前はダメだ」と相手を否定し、相手のよくないところを、まるで重箱のすみをつつくように指摘し、ダメなところをクリアにしようとするのです。相手の悪いところを見つけては、「まだ悪い」「まだ汚い」と言い続けるため、相手は自分の価値観を否定されるばかりでどんどん萎縮(いしゅく)してしまい、ついには弱ってしまったり、つぶれてしまったりします。ご夫婦、もしくはカップルのどちらかがキレイ好き、もう一方の方がそうでない場合には、ちょっと注意が必要です。大切な人との仲を保ちたいなら、キレイ好きの方は相手を責めすぎないでください。片づかないタイプの方は我慢し続けないほうがいいですよ。片づけるのが苦手な方を片づけ好きにする方法は、第6章でお話ししますので、参考にしてみてください。ちなみに、どちらもキレイ好きのカップル、またはどちらも片づけられない、というカップルの場合には、問題を抱える割合は低いようです。
片づけは「捨てない」ほうがうまくいく
第1~3章より
ベストセラー『部屋は自分の心を映す鏡でした』(日本文芸社)の著者、待望の第2弾! ! 捨てるだけの片づけでは、 本当に幸せな部屋づくりはできない! たった2つの片づけルール【無理に捨てない×1か所だけをキレイに】 これだけで驚くほど部屋はキレイになる! ●人間関係を改善したい! ―キッチンの片づけ ●女子力をアップさせるには―洗面所の掃除 ●仕事を成功させたい! ―玄関の掃除&片づけ 悩み別の各部屋ごとの掃除&片づけ法も充実!