目次
- ○目標を具体的にする。
- ○自分自身と競争させる。
-
目標を具体的にする。
ある木材の運送業者の積荷状況を調査したところ、法律で定められた最大積載量の約60%の量しか積んでいないことがわかりました。
(材木をどれくらい積めば良いか、という明確な指示がなかった)
「積載量は上限の94%にするように」と具体的な数字をしめしてみた。結果
すると9ヵ月後、木材は最大積載量の90%まで積まれるようになった。
…つまり
人は求められた以上のことをしない傾向があるが、具体的で、難しすぎず、受け入れられるレベルの目標を提示されると、やる気を出す。無気力状態を生み出すパターンには2 通りあります。1つは、なにも目標を立てていないこと。もう1 つは、モチベーションを無くすような目標を立てていることです。モチベーションを上げる目標とは、“ 難しいけど可能” なものであり、手順に意識を向けられるもの。またいつでも、誰でも、同じように解釈できる具体的なものです。運送業者の場合は「もっと荷物を積んでください」と言われるよりも、「最大積載量の94%まで積んでください」と言われた方が、具体的で、“ 難しいけど可能” だと感じられたため、モチベーションが上がりました。同じように私たちも「もっと訪問件数を増やそう」と決めるよりも「週に最低20 件訪問しよう」と決めた方が、「できるだけ残業しないようにしよう」と決めるよりも「週3 日は18 時までに帰ろう」と決めた方が、工夫のしがいがあり、モチベーションを上げやすいはずです。手を伸ばせばなんとか届きそうな距離にある。それでも、今のやり方を続けていたらクリアはできない。そういう目標が立てられると、人は無意識のうちに選択肢を増やすことになります。そして選択肢が増えれば増えるほど「できれば、やりたくない」という気持ちから、「できることがあるのに、なにもしないのはもったいない」という気持ちに切り替わりやすくなります。目標とは未来の自分を変えるためのものではなく、今の自分の“ 感情” を変えるために役立つものなのです。
感覚的にやっていることを、数字に変えてみよう。自分自身と競争させる。
被験者である男の子に、2 人1 組になって、課題を解いてもらいます。そして課題を解き終えるたびに、2 人の成績が読み上げられます。Aチームの男の子たちには…
「成績が良かった方が勝ち。勝った方はごほうびをもらえる」と伝える。Bチームの男の子たちには…
「勝ち負けはなし。2 人には研究に協力してくれたごほうびをあげる」と伝える。結果
「自分の成績はどうだったか?」と振り返ってもらったところ…Aチーム
自分の能力や運と結びつけた子が多かった。Bチーム
自分の努力と結びつけた子が多かった。
…つまり
他者との競争は過信を生みやすく、
自分との競争は意欲を生みやすい。仕事においては“ 競争” が必要だ。競争があるからこそお互いを高め合い、お互いの成長を促進させることができるのだ。そういう考えを持っている人は少なくないでしょう。たしかにそういう側面もあります。仕事の出来不出来によって順位をつけられたり、その順位によって報酬を増減させられることによって、人はもっと認められたいと思い、もっと仕事をがんばろうと思うかもしれません。ところが競争は「勝敗の結果が出た後」が問題なのです。人は結果が出ると、なぜその結果が出たのかを分析します。そして競争に勝った場合は「自分はできる人間だから」「自分は強運の持ち主だから」と結論づけやすく、競争に負けた場合は「自分はできない人間だから」「自分は運がないから」と結論づけやすいのです。運や素質は、自分の努力や工夫では、どうしようもないものです。ですから組織内でくり返し競争をさせていると、次第に努力も工夫もしなくなる人が増えていきます。するとどうなるか? 活躍できる人と、活躍できない人が固定化するのです。全体としては弱い組織になっていくでしょう。女性よりも男性の方が競争的報酬を好むという傾向があるようですが、それは女性よりも男性の方が単に自信過剰な人が多いからです。競争的報酬を好む人の方がパフォーマンスが高いという傾向は見られません。
競争心ではなく、「あなたならできる」と向上心をあおろう。図解 モチベーション大百科
CHAPTER3 目標設定のモデルケースより
“モチベーション"の正体を突き止めるべく、スタンフォード大、ハーバード大、コロンビア大、プリンストン大、ペンシルバニア大など数々の一流研究機関でおこなわれた100通りの心理・行動実験を、ビジネスマンにも応用できるよう図解でわかりやすく解説。
関連記事
この記事に関するタグ