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- ○忙しくさせない。
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忙しくさせない。
被験者である神学部の学生たちに、講堂で新約聖書のたとえ話「善きサマリア人」をスピーチするため大学構内を移動してもらいます。講堂の入り口でうずくまる、みすぼらしい服装の男が仕掛人です。男は被験者が通りかかるたびに、うめき声をあげ、苦しそうに咳をします。※「善きサマリア人」とはこんな話・旅人が追いはぎに襲われ、怪我をしてうずくまっていた。
・祭司が通りかかるが、無視して通り過ぎた。
・助けてくれた人がいた。それはユダヤ人の敵であるサマリア人だった。
Aチームの学生には…
講堂に移動する前に「まだ時間の余裕がある」といわれる。Bチームの学生には
講堂に移動する前に「遅れているから急げ」といわれる。結果
苦しんでいる男に手を貸そうとした被験者は
Aチーム 63%
Bチーム 10% だった。(参考 心理学者ジョン・ダーリーとダニエル・パッソンの実験)
…つまり
時間不足は人の信念を失わせる。「忙しい」ことを自覚していると、思いやりが欠如していきます。自己中心的になっていることも当然のように思えてきます。周囲の役に立とうと予定を詰め込んだはずなのに、なぜ自分ばっかりという被害者意識がにじみ出て、周囲の人たちと衝突したり、すれ違いが起きたりします。時間の使い方は人生そのものです。同じ1 時間という時間の中でも、たくさんのことをする人と、少しのことだけをする人がいます。一度にたくさんのことをする人は「仕事が早い」「仕事ができる」などと賞賛されやすいものですが、実際は予定の数が多いほど、一つひとつの予定に対して「なんのためにそれをするのか」が不鮮明になっています。充実した1日を送るためには、「その予定」のことだけに集中できるように、予定と予定の間に空白の時間を持たせる必要があるでしょう。意識の問題なのです。次、次、次と先のことばかりを考えていると、時間の質が下がります。時間の質を高めるには「今」に意識を向けることがとても大切なのです。人の話に没頭すること。文字の世界に入り込むこと。呼吸を感じること。パソコンをタイプする指の感触を確かめること。窓の外の景色を無心に眺めること。こんな風に、私たちは与えられた時間の質を“ いつでも” 高めることができます。
予定と予定の間に、空白を持たせよう。
図解 モチベーション大百科
CHAPTER7 発想転換のモデルケースより
“モチベーション"の正体を突き止めるべく、スタンフォード大、ハーバード大、コロンビア大、プリンストン大、ペンシルバニア大など数々の一流研究機関でおこなわれた100通りの心理・行動実験を、ビジネスマンにも応用できるよう図解でわかりやすく解説。