目次
- ○怒っている人は、困っている人
- ○「その場を離れたほうがよい」こともある
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怒っている人は、困っている人
まず知っておいていただきたいことは、人間とは、困ったときに感情的に怒ることが多いということ。逆に言えば、感情的に怒っている人は「困っている人」なのです。ご自身を振り返ってもわかると思います。「なんでこんなことに!」と困るようなときに、怒ってしまうのです。その心のメカニズムを知るだけでも「衝撃」が弱まります。
例:上司が感情的な人で困っている。本当は自分の失敗なのに「お前のせいだ」と怒りをぶつけてくる。
真正面からとらえれば、「怒られた」「やっぱり自分はだめなんだ」と落ち込んだり、「上司の失敗なのに」と反発を感じたりする、つまり被害者意識にとらわれるわけですが、これは単なる、困った上司の悲鳴です。もちろん上司がすさまじい勢いで怒ってくるのであれば、怖いですから、その場からいなくなりたくなるのは当然です。「居場所のなさ」を激しく感じるでしょう。でも、「所詮は上司の悲鳴」と思えば、「申し訳ございません」と場を穏便におさめることもできます。もちろん、あなたのせいでしょう、と言いたい気持ちは十分にわかります。しかし、私はこのような「申し訳ございません」を、謝罪という意味ではなく「お見舞い」ととらえています。自分は別に悪いことをしたわけではないけれども、相手が大変な状態になって悲鳴を上げているのは確かだからです。「私が上司に怒られたのではなく、上司はただ困っているのだ」という視点の転換は、「心の平和(やすらぎ)」をもたらします。「居場所のなさ」は、精神的な寂しさやむなしさにつながるものですが、寂しさやむなしさを感じる方たちにとって、「心の平和(やすらぎ)」を得ようとすることは決して別次元の話ではないと思います。自分の心が平和(やすらか)であるとき、私たちは「居場所のなさ」など感じないからです。ありのままの自分が、ここにいてよいのだ、と思えるのです。とはいえ、もちろん、どんなにつまらない場でもそこに「いなければいけない」などということはありません。時間の無駄だと感じて、退出してよい場なのであれば、立ち去ってもよいですよね。「心の平和(やすらぎ)」を中心に考えれば、行動の自由も広がるでしょう。もちろん「居場所」を感じながら、です。本書では、どんなふうにすると「心の平和(やすらぎ)」が得られるか、ということをもとに、「居場所のなさ」の解消法を見ていきたいと思います。自分の心の平和だけに注目すると、
「居場所」が手に入りやすくなる。 -
「その場を離れたほうがよい」こともある
「居場所がない」と感じるときは、それが自己受容に関わることが多い、ということをお話ししてきましたが、たとえば、ブラックな職場や、いじめなどは、それ以前の話です。怒りや不安など、あらゆる感情は、「その状況が自分にとってどういう意味を持つか」を教えてくれるものです。それと同じように、「居場所のなさ」を強く感じる場所は、実際に自分を人間扱いしていない可能性も高いのです。自分の尊厳が踏みにじられていると感じたら、その場から離れるなり、人に相談するなりしてください。この場合は、人間扱いされないことによって傷ついた自分をそのまま認めることが「自己受容」となります。しかし、それが案外難しいのは、人の尊厳を平気で踏みにじるような人たちは、「お前の努力が足りない」「お前がいけない」というメッセージばかりを出してくるから。ひどい目に遭っているのに「自分がもっと努力しなければ」と、その場にとどまってしまうのです。こんなときにも、ぜひ「心の平和(やすらぎ)」に目を向け、「形のつながり」から解放されてください。また、個人的な関係においても、いくら自分が安全を提供しても、相手は、今まで受けてきた傷があまりにも重くて現時点では心を開くことができない、ということもあると思います。DVのようなことが起こってくるかもしれません。そんなときには、「相手はまだ準備ができていないんだな」と考えればよいでしょう。自分の物理的安全のために距離をとることが必要な場合もあると思います。本書の目的は、あくまでも「居場所のなさ」の解消。「その場にいなければいけない」ということとは全く違います。あくまでも感じ方の話です。そしてそのために唯一守っていきたいのは「自分自身の心の平和(やすらぎ)」です。そのような姿勢でいると相手にも「安全」「居場所」を与えることが可能になりますが、現時点ではまだそこまでプロセスが進んでいない人もいる、と知っておけば十分でしょう。
「自分の居場所がない」と感じたときに読む本
第2章より
職場では同僚たちと、家庭では配偶者や子どもたちに溶け込めず、「疎外感」を覚えたり、「ひとりぼっち」でいることに対する「イライラ」「恥ずかしさ」「落ち込み」を感じている人が増えています。 また、「居場所がない」というと〝孤独〟を連想しがちですが、家族や恋人、親しい友人たちと一緒にいるときにも、「あるべき自分」を演じてしまうことによって、他者との「距離感」や「ありのままの自分を受け入れらない」と感じている人も多くいます。 本書は、そういった身近な人たちとの「居心地の悪さ」の原因を明らかにし、他者と自分との向き合い方のヒントを解説する1冊です。