目次
- ○結婚・転職などで、その場を去るとき
- ○前に進むときこそ、後ろの地固めをする
-
結婚・転職などで、その場を去るとき
いつか、また出会う日のためにも、
最後まで礼儀を尽くします。
結婚前の私(君島十和子)は、何よりも仕事が最優先の人間でした。ちょうど女優の仕事が面白くなっていた時期で、「私はこの道で生きて行くのではないか」と心が動きはじめていたからです。でも、主人との結婚を決めたとき、女優の仕事をやめることに迷いはありませんでした。KIMIJIMAの後継者となる主人を支える仕事は、女優を続けながら両立できるものではないと感じたからです。ただ、女優の仕事をやめたときのことで、今でもしている後悔があります。それは、芸能界でお世話になっていた方々への礼儀を尽くしきれなかったということです。特に、事務所の方々に関しては、心からそう思っています。事務所というのは、私が20代前半からお世話になっていた芸能事務所のことです。家族的でとても温かなところで、だからこそ、私のほうに甘えがあったのだと思います。結婚をするとき、「ありがとうございました。お世話になりました」という、簡単な挨拶だけで済ませてしまったのです。 -
前に進むときこそ、後ろの地固めをする
本来であれば、お世話になったのですから、私の両親や、主人の両親とともに、しっかりとお礼のご挨拶に伺うなど礼を尽くすべきでした。今思えば、自分の結婚への幸せに舞い上がってしまい、ご挨拶が疎かになっていたと思います。私たちの結婚は、この後、大変な騒動に発展します。この騒動のとき、私はすでに事務所を退社することが決まっていましたが、かつて所属していたからという理由で、スタッフの方々は連日事務所に押しかけるマスコミの対応をせざるをえなくなりました。つまり、大変なご迷惑をかけてしまったのです。しかしながら、このときの私たちは、自分たちに振りかかる火の粉を振り払うのに必死で、結局は騒動が落ち着いたあとも、事務所に改めてお礼に伺うなど、最後のけじめをつける機会を失ったまま今日に至っています。だからしこりが残った……ということはありませんが、それでも、一大決心をして前に進むときこそ、周りに及ぼす影響も考えて、しっかり地固めしながら進む必要があることを痛感しています。例えば、結婚や転職などで、進むべき道が別になったとしても、その道がまた再び、どこで交わらないとも限りません。あるいは、別々の道を歩いているさなかであっても、自分の預かり知らぬところで、迷惑をかけていないとも言い切れません。再びご縁があったときに、心から笑顔で「また、よろしくお願いします」と言い合えるように、どんなときも最後までしっかり礼儀を尽くす。目には見えずとも、きっとどこかでつながっているご縁を、大切にし続けたいと、今は強く思います。