目次
- ○上司に悩みを相談できないAさん
- ○憧れの先輩に相談して落ち込むBさん
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上司に悩みを相談できないAさん
この頃、やたらと上司に「何か悩んでいることは? 何か困っていることはないですか?」と聞かれて戸惑っているというAさん。なぜ急に上司は、そのようなことを言い出したのでしょうか。おそらくAさんの上司は、「部下の悩みや、不調に気づくことも上司の仕事」と、研修会などで学んだのではないかと思います。今、会社や組織には“働く人々の心の健康を守らなければいけない”という法律が定められています。この法律(労働安全衛生法と、それに基づく、従業員の心の健康の保持増進のための指針)に基づいて、部・課長職の方を対象にした「部下の話の聞き方」「悩める部下にはこうアドバイスしよう」といった研修が幅広く行われています。でも考えてみてください。今まで仕事の指示しかしてこなかった上司から唐突に、何か悩みはないか? と聞かれ、「実はですね……」とすぐに何でも話せるでしょうか。研修において、単なるスキルやテクニックのようなものを身につけた気になって、「これで俺は、部下の気持ちがわかる上司だ。部下の相談に乗ってやろう」と思われたのでは、Aさんも戸惑うしかありませんよね。では、どんなときに部下は上司に相談しようと思うのでしょうか。ちょうど、この原稿を書いていた日、インド料理店でランチをしていたら、私(ほんだきみ子)の隣に座っていた女性2人が、参考になる会話をしていたので、ご紹介します。コスメ関係のお店の店長さんらしき人に、スタッフの方が自分のプライベート(恋愛)について相談している様子でした。その話の中で、私の耳が反応したセリフ。「やっぱり、店長だったらそう言いますよね」「店長にも、そんな時期がありましたか?」「すみません、こんな相談しちゃって。店長には勝手にすごく親近感を持っているもので……」もうおわかりになりますよね。この人なら今の私と同じ状況のとき、どうするんだろうか。この上司の考え方を聞きたい。そう思えて初めて、上司に相談できるのではないでしょうか。つまり、自身が認めた相手に対しては相談しようと思えるけれど、相手から強制されてまでは相談できないということです。 -
憧れの先輩に相談して落ち込むBさん
「先輩ならばわかってくれるかもしれない」そう思ったBさんは、勇気を出して先輩に相談してみましたが、逆に落ち込んでしまったそうです。Bさんの話を詳しく聞いてみると、納得ができました。その悩みはよくわかるよと言って教えてくれた解決方法は、その先輩だからこそできるような方法だったからだそうです。軽々と問題を解決していく先輩の仕事ぶりを横目に見ながら、「先輩と同じことができるなら、最初から悩んでなんかいない。そう思ってしまって……」と、肩を落として、ますます小さくなってしまったBさん。とても辛かったでしょう。悩んでいる状況や背景、できごとなどが似通っていたとしても、憧れの先輩とBさんとでは、まず経験値が違います。もし先輩がBさんの能力を把握していて、今の状況でBさんにできることとできないことがわかっていたのならば、もっと違ったアドバイスをしてくれたのかもしれません。自分の少し先を歩いている人をモデルにしつつ、相談する相手には情報共有をこまめにして、的確なアドバイスがもらえるような関係性を築いておくようにするとよいですね。相談するのは情報共有をしてからにしましょう
人間関係でストレスを溜めない技術
第1章 相談することの落とし穴より
人間関係の悩みに苦しみ、本当の自分を出せず、ストレスを溜め込んでしまう人に向けて、気持ちを上手に切り替えて、もやもや気分をスッキリ解消する方法を紹介します。