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逆境に負けない心を育てる【レジリエンス】とは

今までつらい思いをしたこと、失敗したこと、思い通りにならなかったことはありますか?  多くの人は「YES」と答えるのではないでしょうか。
この記事では、レジリエンスの意味やレジリエンスの役割について紹介します。

足立 啓美 鈴木 水季 久世 浩司

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目次

  1. ○困難や逆境に負けず、自分らしさを取り戻す力
  2. ○レジリエンスの種は自分で育てることができる
  3. ○レジリエンスが育つとどうなるの?
  4. ○成績にも関係するレジリエンス
  5. ○レジリエンスプログラムの2つのコンセプト
     
    • 困難や逆境に負けず、自分らしさを取り戻す力

      今までつらい思いをしたこと、失敗したこと、思い通りにならなかったことはありますか?多くの人は「YES」と答えるのではないでしょうか。
      人生はよく旅に例えられますが、その旅路には希望や喜びがある一方で、日々のストレスから予期せぬ事態まで、さまざまな困難がつきものです。「レジリエンス」とは、人生において逆境や困難に遭ったときに負けない強さ、そしてそのような状態に思い悩み苦しんでも、そこから「回復する力」のことです。
      ではなぜ、今子どもたちに「レジリエンス」が必要とされているのでしょうか。
      現代の子どもたちは、かつてないようなプレッシャーとストレスにさらされています。試験や勉強のストレスのみならず、いじめを中心とする学校での問題、家族の問題などは、より深刻化、複雑化しています。親や教育関係者として、子どもを守りたいと思うのは当然です。
      とはいえ、子どもが一生のうちに何度も経験するであろう困難や逆境、ストレスなどを、私たち大人が前もって取り除くことはできません。どんなに成功している人でも、すべてがうまくいっているように見える人でも、困難や逆境、失敗はあります。それに耐えたり、くぐり抜けて立ち上がったりすることで、人は成長することができるのです。ですから、私たち大人にできることは、逆境や困難を取り除くことではなく、それらに負けない心を育てるための手助けをすることなのです。
    • レジリエンスの種は自分で育てることができる

      では実際に、「レジリエンスを身につけている人」とはどのような人なのでしょうか。
      例えば、2014年の冬に行われたソチオリンピックに、フィギュアスケート日本代表として出場した浅田真央選手は、海外メディアや解説者から「レジリエンスのある選手だ」と絶賛されました。彼女は、金メダルを期待されながら、ショートプログラムではまさかの16位という出だし。しかし、たった1晩で気持ちを立て直し、翌日にはフリープログラムで別人のように素晴らしいスケーティングを披露して6位に浮上したのです。彼女の見せた、逆境から立ち上がり本来の自分に戻る力こそ、レジリエンスです。
      もっとも、この話を聞いて、「あの人は特別だから」とか「生まれつき強い人なんだ」と感じる人もいるかもしれません。確かに、遺伝的にレジリエンスが高い人がいることは事実です。しかし、レジリエンスの種はすべての人の中にあります。人によって種の種類や大きさはさまざまですが、その種は自分で育てて、強く大きくすることができます。
      そこで本書では、このレジリエンスの種を、大人と子どもが一緒に育てていくコツをわかりやすく解説します。
    • レジリエンスが育つとどうなるの?

      ある小学校の4年生の学級で、レジリエンスを表す映像として、大きな波を乗りこなすサーファーのビデオを見てもらいました。彼は、どんなに大きな波が来ても、力の限り波に乗り続けます。ときに波から落ちてしまっても、もう一度サーフボードの上に立ち、波を乗りこなします。この映像を見せたあとで、児童にレジリエンスはどんな力かを聞いてみたところ、「あきらめない力」という答えが多く返ってきました。とてもわかりやすい言葉ですね。大変なことがあっても、あきらめなければ乗り越えられるということを教えてくれる言葉です。
      そして、レジリエンスが育つとどのようなよい点があるのかについても考えてもらったところ、「くよくよしなくなる」「もっといろんなことにチャレンジできそう」「心が強くなる」「自信や勇気がわいてくる」「習い事が上手になる」というような回答が挙がりました。どれもレジリエンスのよい点をとてもよく言い表しています。このように、レジリエンスが身につくと、どのようなよいことがあるのかをイメージすることは、レジリエンスの必要性を感じることができるので、とても大切です。
    • 成績にも関係するレジリエンス

      私たちは、自分が今できる以上のことをしようとするとき、快適な場所から一歩踏みださなければなりません。そこは、未知の世界なので、ときに怖さを感じることもあるでしょう。ですが、レジリエンスを身につけていると、失敗しても自分には立ち上がる力があることを知っているので、おそれずに挑戦できるようになります。
      アメリカにおける心の教育の研究では、レジリエンスや幸福度が高いと、学校や教師、クラスメートとよい関係性を持ち、授業に参加する意欲もより高く、学業成績にもよい影響があることがわかってきています(※2)。レジリエンスを身につけることで、「わからない!」と勉強につまずいたときも、テストで失敗して「もう嫌だ!」と思うときも、あきらめずにもう一度挑戦することができるのです。成績を上げるには、ひたすら勉強するだけでなく、レジリエンスを育てることも試してみる価値がありそうです。
      また、レジリエンスや幸福度の高い子どもは、心身ともにより健康で、ストレスに対応する能力があり、社会的に責任の高い役目を果たす人生を送る傾向があるという研究結果があります(※3)。つまり、子どもの頃にレジリエンスを身につけておくことで、生涯にわたり、社会に貢献できる人材になれるということなのです。

    • レジリエンスプログラムの2つのコンセプト

      本書で紹介するレジリエンスの育て方は、フランスのエコール・セントラル・パリ大学院のイローナ・ボニウェル博士が青少年向けに開発したプログラムを基に、日本人向けにアレンジしたものです。
      このレジリエンスプログラムとは「回復する力」を育てるプログラムで、大きくは2つの重要なコンセプトに分かれています。1つは、ストレスにさらされてネガティブ感情から抜けだせなくなってしまったときに、そこから立ち上がる瞬発力を身につけること。そして、もう1つは、木が根を張るようにレジリエンスの基礎作りをしていくことです。
      この2つの力を身につけることで、大きな困難や挫折に直面したときにも、ネガティブ感情から抜けだしやすくなり、最悪の事態を防ぐことができるのです。知識編では、このプログラムを子どもに教えるに当たり、大人がレジリエンスを学ぶとともに、みずからのレジリエンスを育てていきましょう

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