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ネガティブな感情から抜け出すコツ

友人に悩みを相談したら「そんなことで落ち込んでいるの? 気にしないことだよ!」と言われたとします。「聞いてくれればいいだけなのに」など、さまざまな思いや考えが浮上します。体は硬直し、嫌な汗が出て、ネガティブな感情と考えに支配されて、同じことを考え続けます。この記事では、ネガティブ沼からの脱出方法について紹介します。

足立 啓美 鈴木 水季 久世 浩司

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目次

  1. ○ネガティブな感情のままでは問題を解決できない!
  2. ○不健全な気晴らし方法に注意!
     
    • ネガティブな感情のままでは問題を解決できない!

      友人に悩みを相談したら「そんなことで落ち込んでいるの?気にしないことだよ!」と言われたとします。
      とっさに、さまざまな思いや考えが浮上します。「聞いてくれればいいだけなのに。なんであんなふうに言われるのか、すごく嫌な気分!どうしてあの人に相談したんだろう。大体、誰も自分を理解してくれないんだ」。
      体は硬直し、嫌な汗が出て、ネガティブな感情と考えに支配されて、同じことを考え続けます。このような状態で、子どもと接したり、重要な会議に出たりするとしたらどうでしょう。とてもじゃないですが冷静になれず、子どもに八つ当たりしたり、会議で失敗したりしてさらに自信を失ってしまいそうです。
      一般的には「くよくよと考えすぎ」と言われそうな場面ですが、これがネガティブ感情のやっかいなところなのです。考えれば考えるほど、堂々巡りになっていきます。この反すうによってネガティブ感情はどんどんパワーが強くなり、底なし沼にはまっていきます。
      ふだんから反すうする傾向にある人は、ストレスに弱く、うつ病の発症につながりやすいと考えられています。1989年に、サンフランシスコ地震という大惨事がありました。そのとき被災した人に対し、くよくよと考える傾向が強い人とそうでない人のどちらがうつ病になりやすいか、ということを調査した研究があります。その結果同じ状況下でも、くよくよと考える傾向が強い人のほうが、うつ病にかかっていたのです。
      とはいえ、誰かに嫌なことを言われたり、がっかりしたりすることが続けば、誰でも怒りや不安を感じ、気分がめいるのは当然です。ここで大切なのは、感情を止めようとするのではなく、その感情や思考にとらわれて身動きできなくなるのを避けるということです。そのような状態になれば、自分が苦しくなるだけで、問題は解決しないからです。
      ネガティブ沼にはまっていることに気がついたら、できるだけ早くそこから抜けだす必要があります。その最善の方法は、何か別のことを行って、感情や体を落ち着かせることです。自分にとって最適な「気晴らし」の方法を身につけると、感情を自己コントロールしやすくなるのです。
      多くの人は、すでに自分なりの気晴らしの方法を持っているかもしれません。ここでは、ネガティブ沼からの脱出効果が科学的に確かめられている、5つの方法を紹介します。どれも生活に取り入れやすいものばかりですが、自分の性格や生活スタイルに合っていなければ逆にストレスになってしまいます。自分に合った方法を探してみましょう。
      また、天気のよい日にできること、自宅でできること、電車の中でできることなど、状況に応じた方法をリストアップしておくとよいでしょう。さらに、子どもには、すぐにその活動ができるように、必要な道具をそばに置いておくこともよいでしょう。

      ①運動

       

      体を動かしたら、不安や焦りが減ったという経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
      体を一定のリズムで動かすような運動は、不安や緊張を感じるとき、ストレス解消をしたいときに効果的です。
      特に、水泳やジョギング、散歩、ダンスなどの有酸素運動を行うと健康や美容にもよく、心身両面に効果があります。これらの運動をすることで、気分の高揚や幸福感が得られることがわかっています。
      ある研究では、うつ病と診断された156人の男女を、「週3回、30分間の有酸素運動をするグループ」「抗うつ薬を服用するグループ」「有酸素運動と抗うつ薬服用の両方を行うグループ」の3つに分け、効果を比較しました。
      その結果、4カ月後にすべてのグループでうつ病の改善がみられました。そして驚くことに、その後の再発率は、有酸素運動のみを行ったグループが8%と、抗うつ薬のみのグループ(38%)、両方を行ったグループ(31%)と比較して、最も低かったのです。
      このように、運動するだけでネガティブ沼から抜けだすことが可能なのです。子どもがネガティブ沼にはまっているようであれば、一緒に散歩に出かけるのも1つのよい方法でしょう。

       

      ②音楽

       

      自分の好きな音楽を聴いたり、歌ったりして気分を変える経験をしたことがある人は多いでしょう。音楽には、不安を和らげ、リラックスさせるすばらしい力があります。好きな音楽を聴くことは免疫機能を高め、病気の進行を抑える物質を出すという実験結果もあるほどです。ネガティブな思考から離れて没頭できるのなら、聴く、歌う、楽器を弾くなど、どんな形でも有効です。
      嫌な気持ちになったときや、くよくよと考えてしまっているときは、鼻歌を歌ってみるのもよいかもしれません。

       

      ③呼吸法と瞑想

       

      私(足立啓美あだちひろみ)が観光地で修学旅行の団体に遭遇したときのことです。学生であふれる土産物店に、大きな声で言い争っている男子生徒が2人いました。どうやら、片方の生徒がもう片方に、お土産をあげる相手について、しつこく聞きだそうとしてけんかになってしまったようです。すると、担任教師であろう女性が駆け寄って、興奮した1人の生徒を外に連れて行き、「一緒に深呼吸をするよ」と言って、「1…2…3…」と数え始めました。10まで数え終わる頃には、その生徒はすっかり落ち着いて、教師に大きな声を出したことを謝罪していました。
      このように、激しい感情をコントロールできないと感じたとき、深呼吸で一旦落ち着くことは非常に効果があります。体をリラックスさせ、ストレスや不安、緊張感を軽減して、ネガティブな思考から頭を解放することができます。通常の呼吸よりもゆっくりのペースで、息を長く吐くように意識しましょう。小さな子どもの場合は、風船をふくらませたり、しゃぼん玉を吹いたりすることも呼吸法として使用できます。
      瞑想めいそうも、手に負えないネガティブな思考や感情を落ち着かせる方法の1つです。瞑想は宗教的な概念を超えて、子どもから大人まで世界中のさまざまな場面で活用されています。国内でも、学校で授業や集会の前に、「黙想」「黙思」などを取り入れているところもあるでしょう。
      また、ネガティブ沼から抜けだすためには、ネガティブな思考から距離をとることが大切です。この方法として「マインドフルネス」が注目されています。

       

      ④書きだすこと

       

      イライラ、もやもやした気分が続くとき、日記などに思考や感情を書きだす方法も効果的です。
      「○○さんに、××と言われた。嫌な気分!」「どうしていつも、余計なことを言ってしまうのだろう……」などのように、自分の正直な気持ちを率直に書いてみます。
      誰かに見られることのない場所で書くと安心です。そして、できれば携帯電話やパソコンなどの機器に打ち込むのではなく、紙に書きだすとよいでしょう。
      書くということを通して、
      ●自分のイライラ、もやもやした気分や不安、傷ついていることが明確になる
      ●散らかっていた考えが整理される
      ●客観的に物事が見られる
      ●体験していることの中に意義を見いだせる
      というような効果があります。ネガティブ沼にはまっているとき、自分の考えを整理して客観的に物事を見られれば、抜けだしやすいでしょう。
      米テキサス大学のジェームズ・ペネベーカー博士は、トラウマとなるような大きな出来事に、人がどのように対処するかを研究しました。トラウマとなった経験について、1日15分、3〜4日間書いてもらう実験を行ったのです。すると、不安感が減り、健康状態が改善し、人ともよりよい関係を築けるようになったという結果が出ました。
      また、パニック障害などの神経症の治療法として知られる森田療法では、日記を書くことが治療の柱となっています。

       

      ⑤没頭できる活動

       

      5つ目は、「何か没頭できる活動をする」ということです。あまりに我を忘れて活動に集中していたので、気がついたら何時間も経っていた……という経験は誰にでもあるのではないでしょうか。この状態を「フロー」と呼びます。
      あなたは、どのような活動をするときにフロー状態になりますか?ある人は料理や掃除をしているとき、ある人は仕事の資料を作成しているときかもしれません。これまでに紹介した、運動や音楽、何かを書くことに没頭するという人もいるでしょう。フローは、通常、少し難しいことに挑戦しなければならないときに感じやすいものです。
      何かに集中してフロー状態になることは、物事から一旦離れてパワーを充電したり、高揚感を覚えたりする効果があるのです。

       

      特徴 方法例
      ①運動 不安、焦りを感じるときに。有酸素運動は 心身の不安定さを抑え、ストレスから守る効 果がある 散歩や早歩き、水泳やジョギングなど
      ②音楽 ストレスを解消したいとき、不安を和らげた いときに。リラックスし、楽しい気持ちになる 好きな音楽を聴いたり、楽器 を演奏したりする
      ③呼吸法と瞑想めいそう ショックを感じたとき、強い不安を和らげた いときに。心が落ち着き、集中力がアップ する</> リラックス呼吸法、マインドフルネスなど
      ④書きだすこと 気分を害されたとき(怒りの感情のとき)に。 考えが整理でき、物事を客観的に見られる ようになる 1日15分程度、日記などに自 分の感じていることを書いて みる
      ⑤没頭できる活動 エネルギーが欲しいとき、リフレッシュした いときに。高揚感を覚え、ポジティブで生 産的になる 読書、料理、楽器演奏、スポー ツ、ロッククライミングなど
    • 不健全な気晴らし方法に注意!

      気晴らしというと、お酒、やけ食い、テレビゲーム、メディアに浸るなどの方法をつい選んでしまう場合もありますが、それらには注意が必要です。度が過ぎると、効果があるどころか、かえって悪い影響が出るおそれがあります。
      もし自分が不健全な気晴らし方法を行っていると感じたら、できるだけその回数を減らし、健全な方法に置き換えましょう。

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