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『セーラームーン』から学ぶ人間関係・友情の理想形
1992~97年に放映された「美少女戦士セーラームーン」は、当時社会現象化するほどの人気でした。
子どもの頃見ていた!と、今も鮮明に覚えているアラサー女性は多いのではないでしょうか。
放送終了から20年が経過し、オトナになった今、改めて噛み締めたいセーラームーンの魅力のひとつ、「友情」をご紹介します!
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目次
- ○等身大の女の子たちの姿
- ○月野うさぎたちと地場衛の関係
- ○「女子の友情」の理想形
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等身大の女の子たちの姿
『セーラームーン』という作品の魅力のなかで、もっとも大きいものは何かと問われれば、「女の子の日常が描かれている点」と即答したい。〈通常運転〉が魅力的であるとは、つまり日常が魅力的ということと同義である。だからこそ『セーラームーン』というアニメは、バトル要素が強いにもかかわらず、等身大の女の子として楽しく溌溂と毎日を送っているセーラーチームの描写に、たくさんの尺を割いている。セーラーチームの5人は3つの中学から集まった14歳の女の子たちだ(最終的にレイ以外の4人は同じ高校に進学し、16歳となる)。世界や宇宙の破滅を防ぐために戦う一方、メンバーの部屋やたまり場のパーラーでガールズトークに花を咲かせる。恋バナから食べ物の話、進学や将来の夢の話まで。のろけたり、ふざけたり。おちゃらけたり、からかったり。時に反目しあって、険悪にもなるが、励ましあい、認めあい、リスペクトしあう。バカもやるし、泣き言も言う。しかし、ここ一番の正念場では、不退転の覚悟をもって、鉄の結束で巨悪と戦う。セーラームーン世代にとって、セーラーチームの友情は理想型に近い。 -
月野うさぎたちと地場衛の関係
この5人チームについては、論じるべきことがたくさんある。まず、5人のなかで月野うさぎにだけ彼氏の地場衛がいる。そして、彼氏のいるうさぎがメンバーの嫉妬の対象にはなっていない。嫉妬するポーズはあるが、あくまでおふざけの範囲内である。敵対視されていないのだ。それどころか、衛はうさぎ以外の4人とも仲がいい。セーラーチームの5人と衛の6人で遊んだり、出掛けたりもする。うさぎたちが14歳であるのに対して衛は大学生なので、衛の年下趣味にはどうしても目が行ってしまうところだが、ごく自然に馴染んでいる。衛は中学生5人に対して、折り目正しい〈お兄さん〉としてふるまっている。さらに面白いことに、衛はうさぎと付き合う前、一時的にレイと付き合っていた。つまりうさぎは親友の元カレと付き合っており、レイからすれば元カレの彼女が親友ということになる。普通ならギスギスして友人関係そのものが成立しないところであろうが、そんなことはない。しかも、後々になって、この件を深刻にならない程度に他のメンバーが蒸し返す描写もある。うさぎとレイ、および他のメンバーは、(つまり制作陣は)「衛の元カノがレイ」であることを〈なかったこと〉にはしていないのだ。10代も半ばになり、誰が誰の元カレだから告るのはやめよう……などと胃が痛くなる教室内女子グループ会話に嫌気が差したとき、ふとセーラーチームのカラッとした友人関係を羨ましく思うのは、セーラームーン世代に限った話ではないだろう。 -
「女子の友情」の理想形
この、「誰かが誰かと付き合っていること」が女同士の友情に影響しない(影響すべきでない)こと、ごく普通の日常の一様態である(べきである)ことは、意外な者の口からも援護射撃として主張される。黒猫のルナだ。第141話「恋の嵐! 美奈子のフタマタ大作戦」で、ルナはセーラーチーム(中三の少女)に対して、「付き合ってる人の1人くらいいたほうが健全ってもんよ」と言い放つ。ルナは猫だが、うさぎたちにとって「良識あるお姉さん的な世話役」といった立ち位置なので、大人の目から見ても「彼氏がいる友情関係はむしろ好ましい」ことを担保する発言ととらえてよいだろう。このように、彼女たちの鉄の友情は、セリフによる主張からではなく、普段からの楽しげなやり取りの空気感によって、じっくり熟成されるように視聴者に伝えられる。セーラーチームの愛おしい日常を毎週、日常風景のように見ていた女児たちは、「女子の友情」の最高の理想形を、浴びるように刷り込まれた。第104話「友達を求めて! ちびムーンの活躍」では、一度は未来に帰ったちびうさが、ネオ・クイーン・セレニティ(ちびうさの母=未来のうさぎ)に命じられ、修行のため再び20世紀に戻ってくる。その際、未来世界でちびうさに課せられたたった1つのオーダーは「友達を作ること」だった。母から娘へ、友達の大切さが直接伝えられているのだ。
セーラームーン世代の社会論
第3章より
『セーラームーン』に登場した敵の主張には、セーラームーンたちの「正義」が隠れており、さらにセーラーチームの日常は、現在のアラサー女子の仕事観や、女性観などに多大な影響を及ぼしています。また、月野うさぎを分析すれば、セーラームーン世代の恋愛観までもが浮き彫りに……。「『セーラームーン』ってこんなに深かったの!?」と思わずにはいられない読み応えたっぷりの1冊!