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「曇らない鏡」の仕組みとは?すごい技術の秘密

お風呂の鏡や、雨天時のドライブでミラーが見えにくくなるといった悩みを解消してくれる「曇らない鏡」が人気を集めています。この鏡にはどのような技術が使われているかご存知ですか?曇らない鏡に隠された2つの技術をご紹介します。

涌井良幸

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目次

  1. ○曇らない鏡
     
    • 曇らない鏡

      風呂の湯気ゆげで鏡が見えなくなって困ることがある。このとき役立つのが曇り止めスプレーである。鏡をよく拭き、このスプレーを吹きかければ、鏡は元のようにクリアになる。どうして曇りを止められるのだろう。
      鏡が曇るのは、鏡に無数の小さな水滴がつき、光が乱反射するからである。したがって、この水滴をなくしてしまえば、鏡は曇らないはずだ。曇りを解消するには、鏡に水滴をなじませてしまえばいい。つまり、鏡の表面を親水化すればいいのだ。そうすれば、表面は平らになり、鏡は曇らない。その親水化の物質でできた製品が曇り止めスプレーなのである。
      曇り止めスプレーには親水性ポリマーが利用される。親水性ポリマーはイオン性の有機化合樹脂で、鏡にとりついて親水性の膜を作る。こうして水滴は鏡の表面で平らになり、曇らなくなる。

      鏡が曇る理由

       風呂で鏡が曇るのは、無数の微小な水滴が表面について光が乱反射するためだ。

      鏡が曇る理由

      曇り止めのしくみ

       曇り止めスプレーを鏡に吹きかけると、水滴がついても曇らない。いったいなぜだろうか。

      曇り止めのしくみ


      ただし、スプレーによる「曇り止め」には限界がある。時間とともに親水性ポリマーが剥がれ落ち、効果が消えてしまうからだ。そこで、最初から鏡に親水性の物質をコーティングしておく方法が開発されている。それが酸化チタンを利用する方法である。
      近年知られるようになったことだが、酸化チタンには超親水と呼ばれる性質がある。酸化チタンに光を当てると、その周辺が高い親水性を帯びる、というありがたい性質だ。そのため、酸化チタンを鏡のガラス表面にまぶしておけば、鏡表面は親水状態を保ち、曇ることがないのだ。
      酸化チタンには超親水性以外にも、光触媒ひかりしょくばい作用と呼ばれる頼もしい性質がある。酸化チタンの近くについた油膜などを、光の力を利用して酸化・分解する性質だ。つまり、鏡に汚れがついても、ひとりでに剥がれ落ちてしまうのである。おかげで、酸化チタンをコーティングした鏡は長時間防汚効果を保ち、良好の反射性を維持することになる。汚れのつきやすい道路の反射鏡に、酸化チタンをコーティングした鏡が利用されるのはこのためである。

      酸化チタンの光触媒作用

       酸化チタンは光を利用して有機物を酸化し、破壊する。

      酸化チタンの光触媒作用

      親水性物質のセルフクリーニング機能

       親水性被膜には本来、自己浄化の機能がある。ゴミの下に水がしみ込み、ぬぐい去るからだ。酸化チタンはさらに光触媒作用が加わるため、クリーニング効果は抜群である。

      親水性物質のセルフクリーニング機能

身のまわりのすごい技術大百科

涌井良幸

KADOKAWA

第3章 生活用品のすごい技術より

身近にある「便利なモノ」には「便利さの理由」がある。しかし、私たちはそれをよく知らないままに日々生活しています。本書は、身近な家電から巷で話題のハイテク機器、よく使う文房具まで、日ごろよく使う「モノ」の“すごい技術”を図解でわかりやすく解説する一冊です!

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