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職場で差がつくビジネスカタカナ語

社会人としてのレベルは、仕事の力量以外にも語彙力からも判断されてしまいます。大人としての知性と教養を感じさせる語彙を身につけ、社会人としての評価をアップさせましょう。日本語研究の第一人者・齋藤孝さんの著書から、頻出ビジネスカタカナ語を一挙ご紹介します。

齋藤孝(明治大学文学部教授)

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目次

     
    • フレキシブル(flexible)

      意味

       融通のきく様子。柔軟性のある様子。


      「フレキシブルに対応する」というのは「柔軟に対応する」という意味。「柔軟に」と言うと「柔らかい」というだけのイメージになりますが、ここでは「変化に即応する」「臨機応変」というニュアンスが強いですね。名詞形である「フレキシビリティ」について『経済・ビジネス用語辞典』を見てみると、「市場環境の変化や顧客ニーズの変化に対して柔軟に対応する組織能力のこと」とあります。つまり、フレキシビリティの高さが競争力になるということ。それは人の心も同じでしょう。フレキシブルでしなやかな心が社会で生き残る秘訣かもしれません。
    • ダイバシティ(diversity)

      意味

       多様性。企業で、人種、性別、年齢などを問わず多様な人材を活用すること。


      「ダイバシティに取り組む」のように使います。様々な物事に対する対応力や適応力が求められる今、多彩な人材の力を活かすことが企業の課題になっています。私が商品の名前を新しく決める会議に出席したときのこと。対象は若い女性であるにも拘わらず、出席しているのは全員50代以上の男性。そこで私は、最終候補に残った3つについて女性たちにアンケートを取ろうと提案しました。すると結果は、会議で最下位だったものが1位になりました。メンバーを多様化し、チームの感覚を多様化することがいいアイデアがつながることを実感しました。
    • グランドデザイン(grand design)

      意味

       長期にわたって行われる大規模な計画。


      地から見直してみようというときに、「グランドデザインを考え直してみよう」という形で使います。自分の仕事に集中しすぎると、どうしても細かいことばかり意識が向いて、かえって非効率になることがあります。そんなときに俯瞰で全体を眺めてみることは、自由で開放的な空気をもたらすことにもなります。ちなみに、後に東京となる江戸をグランドデザインしたのは徳川家康だと言われています。後に首都になる街の基礎を作ったという点でも、家康の力がわかります。
    • ロールモデル(role model)

      意味

       役割を担う人。模範。手本。


      ビジネスでは、「私のロールモデルは○○さんです」と言います。ロールモデルを持つと成長しやすいですね。それが最近では、ロールモデルがいない、お手本にしたいほどの人がいないという不幸な職場環境の人も少なくありませんが。一人にしぼるのが難しい場合は、三人挙げるといいでしょう。例えば、エジソン、織田信長、スティーブジョブズ、であれば、新しいものを生み出しながら攻めのビジネスを目指す、となります。自分で勝手に〝先生〟として慕うことを「私淑」と言いますが、私淑する人を見つけると、新たな道が開けてくる感じがします。
    • トレードオフ(trade off )

      意味

       複数の条件を同時に満たすことができない関係。


      「完全雇用と物価の安定はトレードオフの関係にある」という言い方をします。これは、失業率を抑制すると物価が上がり、物価を安定させると失業率が上がるということ。あちらを立てればこちらが立たず、どちらかを犠牲にしなくてはならないということですね。似た意味の言葉に「ジレンマ」があります。ジレンマとは、相反する二つの事柄の間で悩むこと、板挟みになることという意味。どちらを選んでも、またどちらを選ばなくても苦しい胸の内を表現するときに使います。四字熟語では二律背反と言います。
    • ストラテジー(strategy)

      意味

       戦略。戦法。


      という形で使います。戦略に基づいた判断や戦法、つまりどう戦うのかという大きなビジョンのことを指します。戦術がどんなに優れていても、戦法、ストラテジーが間違っていては勝てない。「戦略的思考」という言葉がよく言われているのはそのためです。大局的に見た上で実質的なことを考えなくてはならない、これは先読みの技術でもあります。ビジネス上の交渉では、AがダメならB、BがダメならC、というくらい用意をして臨むことが大事。それがストラテジーです。
    • ステークホルダー(stakeholder)

      意味

       企業の経営活動に関する利害関係者。


      政機関などが含まれます。株主は「シェアホルダー」と言いますが、ステークホルダーには株主も含まれます。「ステークホルダーに配慮する」という形で使いますが、それはすべての利害関係者に対して意識的でいるか、ということ。一部の人だけではなく、広く物事を見て経済活動をすることの大切さを言う言葉です。日本語で「利害関係者」というと、トラブル時の「利害」というイメージを思い起こさせるので、ステークホルダーという言葉が浸透したのかもしれませんね。
    • ニッチ(niche)

      意味

       すきま。大企業が進出しない小規模な分野。


      「ニッチな市場を開拓する」という形で使います。もともとは、ローマ建築で用いられた壁のくぼみのことで、そこに彫像などを収めていました。ビジネスでは隙間産業ともいい、中小企業が得意な分野があります。例えば、砲丸投げの球。球には、滑り止めの役割を果たす細い溝が彫ってあるのですが、それには専門的な技術が必要。砲丸投げの球というニッチな市場の世界的なシェアを持っているのは、日本の町工場だそうです。起業したいと思う人がいたら、市場は大きくないけれど必ず需要があり、大企業と競合しない分野を見つけるといいでしょう。
    • アウトソーシング(outsourcing)

      意味

       業務の一部を他企業に請け負わせる経営手法。社外調達。外部委託。


      「この部門はアウトソーシングした方が効率が良い」という形で使います。正社員を大量に抱え込むよりは、外部の専門的な人に依頼した方がコストとしては抑えられる。アウトソーシングを増やすと、本社の規模は小さく済ませることができますが、本社機能が弱体化し、企業体力が落ちるというデメリットはあります。ただ、企画を立てたり新しいアイデアを生むといった仕事はアウトソーシングが難しい。それは、企業としての戦略的な生命線だからです。今の時代は、アウトソーシングできない仕事をする人が求められる傾向にあると思います。
    • スキーム(scheme)

      意味

       計画、案。図式。


      「新規ビジネスのスキームを作る」という形で使います。スキームという言葉を使うときは、ただの企画や計画よりも全体的な図式が決まっている状況です。ビジョンというと、具体的な進め方は決まっていないもののゴールだけが見えているという感じですが、スキームはビジョンに従ってどう進めるかという段取りが確定している感じがします。注意深く練られているというニュアンスなので、漠然としているものやただの思いつき、叩き台とはまったく違います。スキームというからには、全体構成を練り上げて作りこむ必要があるのです。
    • インセンティブ(incentive)

      意味

       やる気を起こさせる動機付け。企業が与える報奨金。


      「社員にインセンティブを与える」という形で使います。イメージで言えば、走る馬の目の前にぶら下げられたニンジンというところ。目標達成に向けて気持ちを高めるための刺激がインセンティブです。企業でも、成績優秀者を表彰するところがあると思います。人には評価されたいという気持ちがあるので、確かに短期的なカンフル剤にはなります。何もないよりはインセンティブがあった方がいいですし、ゲーム性が高まっておもしろく感じるというのもあります。ですから、上手に刺激して組織全体が活性化するといいでしょう。
    • サマリー(summary)

      意味

       要約。概略。会議や論文などの要旨を簡潔にまとめたもの。


      「会議のサマリーを配布する」という形で使います。概要をまとめた書面を指すことが多いですね。だいたいA4サイズ一枚にまとまっていると、サマリーという感じがします。「要約」ですと文章を簡潔にするという意味ですが、サマリーには文章以外の要素も含まれるので〝要約しつつ圧縮する〟という感じの方がしっくりきます。私は常々「理解力とは要約力のことである」と言っているのですが、要約したものを見ればその人がどのくらい理解しているかがわかります。ですので、理解力を上げるためには要約力を磨くことが大切です。
    • セグメント(segment)

      意味

       分割すること。区分。部分。


      「顧客情報をセグメントする」「セグメントごとに報告をする」という形で使います。もともとは土木や建築で使う言葉で、一区画、線分の一部、という意味です。大きな塊で考えているとわかりにくい、扱いにくい、また曖昧になりがちなものを、部分に分けて正確に把握するというイメージですね。セグメント情報とは、事業部門や地域別に開示する売上高や営業損益の情報のこと。どんぶり勘定で見るのではなく、区分することで事業内容を明確にするという意識が働いていることがわかります。
    • ベンチマーク(benchmark)

      意味

       ものごとの基準になるもの。


      「市場の動向を示すベンチマーク」「ベンチマークに照らして評価する」という形で使います。もともとは土地を測量するときの水準点を表す言葉でした。語源は大切なもので、語源を知っておくと意味を間違えずに覚えられます。「ベンチマークにする」という表現を、参考にする、お手本にする、という意味と勘違いしているケースがあるので注意しましょう。ベンチマークテストとは、コンピューターのソフトウェアやハードウェアを比較評価するためのテストのこと。処理能力や動作状況などを調べます。
    • ゼロサム(zero-sum)

      意味

       合計するとゼロになること。一方の利益が他方の損失になること。


      人の損失が差し引きゼロになるゲームのこと。「株の売買はゼロサムゲームだ」という形で使います。「ゼロサム社会」とは、アメリカの経済学者サローの著書タイトルでもありますが、誰かが得をすれば損をする人がいる社会のことで、端的にいえば経済の成長が停止している社会のこと。成長経済では全体が右肩上がりに伸びていくので、差し引きゼロにはならないのです。資本主義が限界に近付いている今はゼロサム社会だという指摘もあります。
    • コンセンサス(consensus)

      意味

       意見の一致。合意。


      「社内のコンセンサスを得る」という形で使います。「con」が共通の、という意味なので比較的覚えやすいでしょう。だいぶ日本でも使われるようになったので、日本語の語彙と言ってもいいくらいですね。「同意」と「合意」の違いですが、前者は例えば多数決で決めること、後者はコミュニケーションを経て相互で承認すること。ですので、議会で多数派が押し切るのは、合意ではなく、ただの同意です。コンセンサスにはコミュニケーションが不可欠。手続きだけを踏んで一方的に通知するのは、コンセンサスを得ているとは言いません。
    • ボトルネック(bottleneck)

      意味

       支障になるもの。障害。


      瓶の狭い口が窮屈になっていて、円滑な進行を妨げるということから生まれた言葉。「事業拡大のボトルネックは人材不足だ」という形で使います。ボトルネックが取り除かれると、動きや流れが格段によくなります。経済用語では、さまざまな要素がある中で、たった一つの要素が不十分なだけで生産がストップしてしまう状態のときに使います。その要素が人である場合、「あの人が障害だよね」とは言いにくいので、「あのあたりがボトルネックかな」と言うと何となく伝わります。外来語を使うことでダイレクトな指摘を避けるというメリットもあります。
    • リソース(resource)

      意味

       資源。資産。


      「わが社の最大のリソースは、人材である」という形で使います。もともとは資源や資産という有形のもののことでしたが、今では無形のもの、人材や能力、人脈についても使います。資源を幅広くとらえてみると、意外なリソースを持っていることに気づくでしょう。その点では、人脈は意外なリソースの宝庫です。今まで大量にもらってきた名刺を整理することで、リソースの洗い直しにつながるかもしれません。関係を築くために、会ったあとでとりあえず一度メールをしておく。それが、出会いを〝リソース化〟することにもなるのです。
    • アカウンタビリティ(accountability)

      意味

       会計上の責任。説明責任。


      「企業としてのアカウンタビリティを果たす」という形で使います。企業会計というのは、株主や出資者から資産を委託されることで成り立っています。ですので、資産委託によってアカウンタビリティが設定されて、株主総会における決算報告の承認によってアカウンタビリティが解除される。これはかなり正確な説明であると思います。今は、会計上の説明責任だけでなく、もっと広い範囲でも説明責任が問われている時代。企業は、社会全般に対してのアカウンタビリティを求められているのです。
    • コンプライアンス(compliance)

      意味

       法令や規則を守ること。法令遵守。


      「企業としてのコンプライアンスを確保する」という形で使います。個人ではなく組織が主体であり、法令や規則は当然のこと、社会規範や企業倫理まで含めた組織の社会性が試されています。問題が起きてからの対処ではなく、未然に防ぐことも含めてコンプライアンスになっているので、年々ハードルが高くなっている感じがします。社会規範を含むとすれば、現代のセンスに合致していることが必要。その点では、テレビをよく見ることも大事だと思います。今テレビの世界はコンプライアンスが非常に厳しいので、参考になるのではないでしょうか。
    • オンデマンド(on-demand)

      意味

       利用者の注文に応じて商品やサービスを提供すること。


      demand とは需要、要求のこと。需要と供給は「demand & supply」と言います。オンデマンドは需要に応じて供給する形なので、大量生産、大量消費とは対極にありますね。「オンデマンド出版」「オンデマンド配信」という言葉を聞いたことがあるでしょう。少ない注文に対応するということで、かゆいところに手が届く、といった感じです。オンデマンドはスピード感も大事。onはくっついているという意味なので、オンデマンドには即応という意味合いがあると思います。「自作のゲームをオンデマンドで配信する」
    • モニタリング(monitoring)

      意味

       監視すること。観察し記録すること。


      監視というよりも、静かに観察して状況の推移を見極めるといった感じでしょうか。継続的に見るという意味の他に、「新商品のモニタリングを行う」というように、商品についての感想や意見を述べるときにも使います。作り手、売り手側はどうしても主観的な見方になってしまいますし、思い入れがあるので判断にバイアスがかかってしまう。そういうときに、買い手に客観的な評価、判断をしてもらうのは有効です。新しくスタートしたテレビ番組も、一般視聴者の方何人かに見てもらって、その意見を取り入れて改良していきます。
    • クロスメディア(crossmedia)

      意味

       複数のメディアを組み合わせること。


      似た意味の言葉にメディアミックスがありますが、メディアミックスは消費行動を促すなど結果を重視しているイメージの言葉です。メディアには、それぞれの特徴や強み・弱みがあります。例えば、新聞は、比較的高齢の方たちにとっては毎日欠かさず読むものという意識がありますが、若い人たちはインターネットでニュースを読んでいます。また、ネットを頻繁に活用する人の中には、テレビをほとんど見ない、あるいは家にテレビがないという人もいます。そのためクロスメディアが求められているんですね。「クロスメディアで情報提供をする」

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齋藤孝

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