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「責任者を出せ!」とクレームがあった場合の対応方法
一体何について怒っているのかわからないけれど、興奮したお客様に「責任者を出せ!」「上を出せ!」と突然言われるといったケースは、接客・営業の仕事ではよくあります。その場合、まずはお客様のクレームの事実をヒアリングする必要があります。興奮したお客様から上手に事実を確認し、対応するにはどのような点に留意すればよいのでしょう。お客様の怒りを笑顔に変えるクレームコンサルタント・谷厚志さんに対応の注意点を教えてもらいましょう。
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目次
- ○アウトな対応例
- ○OK対応例
- ○限定付き謝罪と聴く姿勢
- ○お客様の気持ちに寄り添う言葉
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アウトな対応例
お客様 「責任者を出せ!」
対応者 「責任者は不在にしております」
お客様 「不在だと!? 携帯電話ぐらい持っているだろう。すぐに連絡を取れ!」
このように、責任者が不在にしているという返答をしてしまうと、「責任者を出す、出さない」というところに論点が変わってしまうことにお気づきになったでしょうか。この状況では、「お客様が一体なぜ、『責任者を出せ!』と言っているのか?」「そもそも、お客様にどんなことがあったのか?」「クレームをなぜ言ってきたのか?」がわからなくなってしまいます。こうなってしまうと、上司を出すまでクレームの事実確認ができません。もっと言えば、対立関係を対話できる関係に変えられません。私は、このようにクレームの冒頭でいきなり「上を出せ!」と要求されたときには、クレーム対応の初期対応と同じ対応法をおススメしています。次の例のとおりです。 -
OK対応例
お客様 「責任者を出せ!」
対応者 「ご不便をおかけしたことがあったようですね。申し訳ございません。お話をお伺いし、上司にも報告をしたく存じます。どのようなことがございましたか?」
このように、クレーム対応の初期対応の基本である、限定付き謝罪と話を聴く姿勢から入る対応がベストだと思います。特にやり方を変える必要はないのです。「私がこの現場の責任者ですので、私が対応します」という対応方法を導入されている会社などもありますが、50%程度の確率で、お客様から対応者の見た目や役職で判断されて、「お前ではダメだ! もっと上を出せ‼」と言われるでしょう。何があったのかわからない状況で、いきなり上席者を出すのは組織としてもリスクが高くなります。もっと言えば、誰がクレーム対応をするのかをお客様から指図されて、そのとおりにする必要はありません。主導権は、あくまでも自分たちが握るべきです。上席者は最終の切り札と考えて、すぐにクレーム対応に出ずに、最初の対応者が限定付き謝罪と話を聴く姿勢により、対立関係を対話可能な関係に変えることを優先するべきです。「お客様は責任者を出してほしいと思うくらい大変なことだと思っている」と真摯に受け止めて、まずメモを取りながら話をしっかり聴き、上席者にも報告して情報共有するスタンスをお客様に示す必要があります。また、クレーム対応で留意すべきポイントとして、〝お客様の言葉に引っ張られない〟という点があります。銀行のカウンターで50代の会社役員が次のように暴言を吐いて、怒りをぶちまけたクレームの事例で考えてみましょう。「お前たちのせいで大損した! 俺はお前たちに言いたいことがたくさんある。支店長を出せ!」私自身も2000件以上のクレーム対応をやってきてわかったことですが、興奮しているお客様は「大損した!」「言いたいことがたくさんある」「支店長を出せ!」などと矢継ぎ早にいかに大変な問題が起きたのかをアピールしてきます。この一連の言葉に動揺してしまったり、「上を出せ!」と言われてオロオロしたりしてはいけません。このケースで言えば、「どれくらいの損失があったのか?」「言いたいことがたくさんあると言っても、それは何か?」「『支店長を出せ!』というくらい、お客様にとって本当に大変なことがあったのだろうか?」と考えられるようになってほしいのです。そのように考えることができれば、次のような限定付き謝罪と話を聴く姿勢をお客様に見せる対応をとることができます。 -
限定付き謝罪と聴く姿勢
「いつもお取引をいただいておりますのに、ご満足いただけなかったことがあったようで申し訳ございません。どのようなことがあったのか、私に詳しくお聴かせいただけませんでしょうか? 私から支店長に報告するようにいたします」
このように窓口に出た対応者がお客様に伝えたところ、お客様の気持ちにしっかりと寄り添って受け止めようとする姿勢にお客様は少し安心されたようで、その後は冷静に話をされたそうです。また、この銀行の渉外担当から提案のあった金融商品で損失を被ったことがクレームの原因であったことも判明しました。「大損した!」というわりには、少ない金額だったようですが、損失があったのは事実でした。それについても、この対応者は真摯に受け止め、次のような言葉をお客様に投げかけたそうです。 -
お客様の気持ちに寄り添う言葉
「お客様のご期待に応えられず、申し訳ない気持ちでいっぱいです。私どもがもう少しお客様に何かできることがないかを考えられていればと反省しています」
この言葉を聴いたお客様は、次のように言って、最後はスッキリとした表情で銀行を後にされたようです。「大声を出して申し訳なかった。金融商品の売買は自己責任ということはわかっていたけれど、この状況をわかってほしかったんだ。話を聴いてくれてありがとう」お客様の問題をすべて解決することがクレーム対応ではありません。むしろ解決して差し上げられることのほうが少ないかもしれません。だからこそ、この例の対応者のように、心と心を通わせる意識を持って、クレームを受け止めて下さい。
講演や研修の質疑応答で必ずと言ってよいほど出てくるのが、「上を出せ!」「責任者を出せ!」と言われたときには、どう対応するか、という質問です。
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2000件以上のクレーム対応を経験し、クレームのすべてを知り尽くす超人気クレーム・コンサルタントが、クレームを受ける人のストレスや恐怖心を取り除くため、お客様の怒りを笑顔に変えるため、クレーム対応で必要なマインドとノウハウのすべてをリアルな実例や自身の失敗談を交えて、余すことなく解説します。