目次
- ○メンバー同士の相互理解を深める
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メンバー同士の相互理解を深める
チームとしての相互理解を深めていく手法を説明します。まずは、相互理解する目的を明確にします。
「なぜ相互理解を深めるのか」「それが何につながるのか」「なぜ今、それが必要なのか」、この3つをわかりやすくメンバーに示す必要があります。実践する目的や意図を書き出してみましょう。
なぜなら、チームで何かに取り組むときには、リーダーのあなたを含めて、メンバー全員が納得しなければ、その取り組みを実践しても実体がないものになってしまうからです。具体的には、次の例のように明確にしましょう。●今期の目標である、「取り組みA」を実現するには、チームワークをしっかりと醸成しておく必要がある
●新しい商品の開発は、多様な価値観を持つメンバーの創発が重要になるため、メンバー間での相互理解をより深めて、コミュニケーションを活性化する必要がある
●それぞれが違うプロジェクトを違う地域で進める中、チームとしての目標を達成するには、ベースとなる考え方をそろえておくことが重要になる
このように、チームの相互理解を深める目的を明確にすると、メンバーの頭もクリアになり、迷わず、話し合いに取り組めるようになります。さて、目的を明確にしたら、どんなテーマで相互理解を深めるかを考えます。それにはいくつかの視点があり、代表的なものとしては、次の3つがあげられます。1つ目の視点は、「人生・キャリア」の共有です。メンバーがどのような人生を歩んできて、どんな喜怒哀楽があったのか。メンバーが自分自身のことも振り返りながら、チームで共有し、相互理解を深めます。これにより、今の状態や発言が、過去のある出来事に起因していることがわかり、より深く相手の発言も理解できるようになります。言葉は文脈から意味が生まれてきます。その文脈を知るための方法が、人生やキャリア自体を振り返り、共有することなのです。2つ目の視点は、「長所・強み」の共有です。物事を進めるときには、強みを生かしたほうがモチベーションは上がり、パフォーマンスの質も高まり、よりスムーズに仕事を進められるようになります。1つのミスが致命的になるような仕事の場合は、弱みを克服してミスを減らすことが大切ですが、そうでなければ、強みを生かし合うチームのほうが、気持ちよく仕事ができ、成果もついてきます。しかし、メンバー同士、お互いの強みは意外と知らないものです。それを互いに理解し、生かし合うきっかけをつくります。そして、3つ目の視点は、「特性・相性」の共有です。誰もが何らかの行動特性や思考パターン、好き嫌いの傾向などを持っていて、無意識に同じパターンを繰り返しています。それらの特徴をある切り口から明らかにし、その特徴を持った人同士の相性なども知ることで、どのようなチームをつくればいいのか、どんなコミュニケーションをとれば、ストレスなく対応できるのかが理解し合えるようになります。これらの視点はすべて、チームでの相互理解を深めるためのものですが、チームの状態に応じて、取り入れやすかったり、取り入れにくかったりします。たとえば、「長所・強み」「特性・相性」の共有は、仕事での活用がしやすいため、実用的だと感じられます。また、「長所・強み」「特性・相性」を知る手段として、心理学などにもとづいてつくられた既存の診断テスト(ストレングスファインダー、FFS理論、エニアグラムなど)を活用するので、結果の信頼性も高くなります。まだチーム内での関係性が築かれていないときや、仕事の話はしても個人的な話をするのが苦手なメンバーが多い場合は、「長所・強み」「特性・相性」の共有から入ったほうがコミュニケーションをとりやすいでしょう。「人生・キャリア」の共有については、メンバー同士の過去の経験を共有することで、お互いの人となりや、価値観を知ることができるので、相互理解には効果的です。しかし、すぐには仕事で生かせる感覚を得られず、どう役立てるのかという疑問を持たれやすいものでもあります。そういったやりづらさはあるものの、この観点での共有はとても有効です。これをきっかけに自己開示をすることができたり、過去の挫折などを乗り越えることができたりして、各メンバーが深く共感し合えることもあります。使い方や使いどころ次第で、大きく効能が変わるでしょう。一長一短はありますが、僕(中村一浩)がお勧めしたいのは、やはり「人生・キャリア」の共有です。チームとしての底力や基盤となる関係性を築くには、一番効果的です。各メンバーが過去の自分をきちんと振り返ることで今の自分に必要なことが見えますし、お互いの過去の経験を知ることで、相手の立場で考えやすくなります。