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上司や先輩から信用される人の共通点

仕事において、また人間として何より大切なことは何でしょう。人に優しくすることでしょうか。何事にも真面目に取り組むことでしょうか。約束を守ることでしょうか。さまざまな意見があると思いますが、それらの根幹をなすのは何より誠実であることではないでしょうか。丁稚からスタートして大変な成功をおさめた経営の神様・松下幸之助さんの元側近・江口克彦さんの著書から、誠実さがなによりも大切である理由を見ていきましょう。

江口克彦(経済学博士)

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目次

  1. ○誠実は「信用」を生む
  2. ○自分の「踏み台」をしっかりと守る
  3. ○絶対に手を抜かない──とてつもない成功への一本道
  4. ○自分だけでなく、まず他人のことも考える
  5. ○約束を守る。とくに時間を守る
  6. ○陰で人を批判しない、中傷しない
  7. ○言ったことは、必ず実行する
     
    • 誠実は「信用」を生む

      何事においても真心がこもっていること、真面目であることが大事です。
      すなわち、「誠実」であることを心掛けなければいけません。
      世の中は「信用」で動いています。
      誠実であればあるほど、そして何事においても誠の心を持って取り組むとき、そこに「信用」が生まれてくるのです。
      仕事が成功するかしないか。人間関係がうまくいくかどうか。これらは結局、あなたが誠実かどうかに帰結します。
      誠実こそ、信用のもといです。
      「信用という花は、誠実という種子たねで咲く」のです。
      名前は聞いたことがあると思いますが、初代熊本藩主の武将、加藤清正かとうきよまさ
      文禄ぶんろく5年(1596年)、京都で大地震があり、豊臣秀吉の伏見ふしみ城も壊れ、多数の死者が出ます。
      このとき加藤清正は秀吉の勘気かんき(怒り)に触れ、謹慎きんしんの身でしたが、「たとえ後で罪を受けても座視ざししているわけにはいかない」と言って、ただちに家来を引き連れて駆けつけ、秀吉の警護に当たりました。その働きに秀吉も大いに喜び、怒りもとけ、再び重用されるようになりました。
      清正は、その晩年、「自分は一生の間、人物の判断に心を尽くし、人相まで勉強したが、結局わからなかった。ただ言えることは、誠実な人間に真の勇者が多いということだ」と言ったそうです。
      これは清正自身が、多くの部下を用いた体験から得た結論だと思いますが、同時に自分自身がまた、誠実な人でもあったからだと思います。
      秀吉が死に、天下の人心がみな徳川家康になびく中で、秀吉の三男、秀頼ひでよりを守り、二条城での家康と秀頼の会見にも命がけで付き添うなどしています。
      終生、秀吉の恩顧おんこを忘れず、豊臣家の安泰のために尽くしたことなども、清正の誠実な生き方を表していると、このエピソードを読んだとき感銘を受けたことを覚えています。
      ですから家康も、清正のその誠実さ、謹厳実直きんげんじっちょくぶりに感服を惜しまなかったとも言われています。
      結局、誠実な人は誠の心を尽くしますから、いつも正々堂々と赤心せきしん(偽りのない心)をもって生きることができるのです。
      策をろうしたり駆け引きをしたりすることで、一時的な成果を手に入れることはできるかもしれませんが、長きにわたって信用を得、活動し、仕事において、人生において大きな成功を収めるなどということはあり得ません。むしろ、後悔することになると思います。
      清正がなぜ、その後、家康にとり潰されることなく、肥後ひご熊本城主であり続けることができたのか。もちろん、関ケ原の合戦で東軍(家康軍)に加担したこともありますが、やはり加藤清正の誠実な生き方、信用される生き方を貫いたことにあると思います。
    • 自分の「踏み台」をしっかりと守る

      誠実であることは、仕事の基本です。
      ならば、具体的に、どのようなことを心掛ければいいのか。
      一つは、自分で自分の立っている踏み台を壊すようなことをしないことです。
      どういうことかと言いますと、気楽な楽屋にいた時代は、言いたいことを自由に言ってもある程度は許されました。時には誇張して、面白おかしく話をしたりします。しかもそれが「ウケる」。ウケると周囲から面白いやつだと人気者になる。
      そうなると、針小棒大しんしょうぼうだいに、いかに愉快に、いかにウケるように話をするかを考えるようになる。そして話をする。一層「ウケる」。しかし、それは楽屋での話し方。あるいは、楽屋でのみ通用することです。
      本舞台で、そのようなごとを言ったとしたら、事情を知らない観客は、それを戯れ言だと思うでしょうか。
      おそらく、舞台の物語の中の必要な台詞せりふ、必然の言葉として受け取るでしょう。それと同じことで、たとえばあなたが面白おかしく一般社会で、いや酒を呑みながら上司の悪口を言う。
      会社の幹部批判をし、いかに自分の会社がダメか、硬直的か、給料が安いかなどと、さほど本気ではないのに、その場を盛り上げるために誇張して話をする。そのときは楽しいでしょう。
      しかし、周囲の知らない人たちは、聞くともなく聞いています。あなたの言っていることを小耳にはさみながら、彼らの会社はそういう会社なのかと思う。当然です。
      しかし、その結果はどうなるか。
      その話を聞いている人たちの中に、優秀な子どもがいる人もいる。その優秀な子が大学を卒業するにあたって就職活動をする。そして、その会社から内定をもらったとします。
      父親に相談します。「あの会社に、就職したいんだけど、どう思う?」。
      きっと父親は、反対するでしょう。
      「いや、あそこの社員が言っていることを聞いたことがあるが、あの会社は社内の雰囲気が悪いらしいよ。経営幹部も能力がないみたいだから、やめとけよ」と言う。息子も「そうか、やめとこうかな」となる。
      少し極端かもしれませんが、このように、あなたの戯れ言が会社の評判を落とし、優秀な人材を逃してしまうこともあり得るのです。
      結果、できの悪い人たちばかりの集まりとなり、やがてあなたの会社は本当に倒産するかもしれない。それもこれも、あなたの面白おかしくの戯れ言が原因。つまるところ自分で自分の立っている踏み台を壊しているのです。
      もちろん、職場批判、上司批判をするなということではありません。完璧な会社、完璧な組織、完璧な上司はあり得ないからです。
      しかし、であるとすれば、その幹部に、その上司に直接、正々堂々と言うべきです。酒の場で冗談でウケを狙って言っていると、とんでもない結末になることもあると知っておく必要があります。
    • 絶対に手を抜かない──とてつもない成功への一本道

      もう一つ、それほど努力をしなくてもそこそこ成果が出るから、適当に仕事をすればいいと考えている人は、誠実な人ではないでしょう。
      手を抜く、汗をかかない、適当に取り組み適当なところまでやり、後は理由をつけて他の人に仕事を振ってしまう。これで誠実だと言えるでしょうか。これで職場の仲間の信用を得ることができるでしょうか。努力しない人を周囲が評価するでしょうか。
      あらん限りの努力をする。誠意をもって可能な限り力を尽くす。汗を流す。その姿を見て、多くの人が「彼/彼女は誠実だな」と感じるのです。
      そういう誠実さ一生懸命さが、あなたの人生にとてつもない成功をもたらすことになるのです。
      プロ野球のイチロー選手も、毎日の誠実な過ごし方の結果。毎日の真剣な練習の結果。とてつもない大きな結果を彼にもたらしました。
      彼は、「努力の天才」だと思います。「生まれながらの天才」ではない。本人がどのように言っているのかわかりませんが、そう思います。その結果が、彼の信用を生み出し、40歳を超えてもメジャーリーグで活躍できたのです。
      誠実であるためには努力すること、努力がまた信用を生み出すことを、心にとめておいてください。
    • 自分だけでなく、まず他人のことも考える

      誠実であるためには、自分中心にならないことも心掛けるべきでしょう。
      誰でも、なにかを考えるとき、あるいは行動するとき、自分を中心にして考えるものです。それは、ある面では仕方のないことです。誰でも自分を起点、出発点にしなければ物事を考えることができないからです。
      しかし、そうだとしても、自分はそう思い感じるけれども、この考えや行動が、果たして周囲の人たちのためになるのだろうか、ほかの人たちに迷惑をかけることにはならないだろうかと考えてみる。
      もし、そういう可能性があるとすれば、自分の考えや行動を控えるようにしよう、自分が100丸ごと手に入れるような考えや行動をするのではなく、自分も50、相手も50ということで行動しようとしてみるのです。
      そのような言動が、周囲の人から、「ああ、あの人は誠実だな」「彼女は謙虚だな」「あの方は信用できるな」と思われることになります。その結果、思いがけず多くの人からの好意や協力が得られることもあるでしょう。
      自己中心的にならず、誠実に相手のこと、相手の立場を考える。これもまた、「仕事の基本」なのです。
    • 約束を守る。とくに時間を守る

      また、誠実であるためには「約束を守る」ということも大切です。いえ、社会では、この「約束を守る」ということだけで、人が誠実であるかどうかを判断する人もいます。時間を守る。これはとりわけ大事です。
      楽屋では、1分遅れようが10分遅れようがそれほど問題はありません。
      まして恋人同士なら、それこそ1時間くらい約束の時間を過ぎてしまったとしても、文句を言われたり「遅れたぞ!」と怒られたりはしますが、それだけで関係が壊れるなどということはほとんどありません。
      まして、「アイツは不誠実だ。絶交だ」ということにはならないでしょう。
      しかし、社会においては、遅刻が致命的になることがよくあります。
      それは、楽屋のように時間もアバウト、立ち位置もほとんどアバウトという状況とは違い、周囲も、相手も時間的にタイトな状態で予定が組まれていることが理由です。
      そのため、遅刻が「まあ、いいよ。お前はいつも遅刻ばかりだ」と笑いで済まされることはないのです。
      極端に言えば、会社は「秒単位」で動いていると言っても過言ではありません。
      あなたの遅刻は、相手の時間、予定を狂わせてしまうことになるのです。ですから、時間を守らないだけで、「誠実ではない」という烙印らくいんを押され、その瞬間から「信用」という手形を手に入れることができなくなります。
      もちろん、アクシデントで遅刻するときもあります。そのときは、すぐにその旨を連絡しなければなりません。今日のようなスマホの時代であればなおさらです。その一つの連絡が、あなたを誠実な人と印象づけ、信用が増すことになるのです。
    • 陰で人を批判しない、中傷しない

      さらに、陰で人を批判しない、陰口を言わないことも大事です。
      当人の前では言わないけれど、いないところでコソコソと批判をしたり、中傷したりする人の話を聞くことがあるでしょう。
      おそらく聞いている分には、面白いと思います。へえ、なるほどね、などと思うこともある。しかし、やがてふと、この人は私のこともこういうふうに他の人に言っているのではないかと不安になるものです。
      途端に、その陰口を言っている人が人間として極めて不誠実に思えてくる。そして、この人は信用できないと感じ始めるのは、当然でしょう。
      人を陰で、本人のいないところで批判し、そしることは、不誠実の烙印を押され信用を失い、成功の階段から必ず突き落とされることになります。
      陰口は言わない、本人のいないところで中傷はしないこともまた、誠実であることの大事な要素でしょう。
    • 言ったことは、必ず実行する

      加えて、自分で言うことは必ず実行する。これも大切です。
      けじめをつけるべきと言いながら、自分は時間も守らない、おカネにもルーズ、人間関係においてもいい加減であれば当然、誠実とは思われません。信用できる人とも思われないでしょう。
      誠実な仕事への取り組み。誠実な人生への取り組み。それが「仕事の基本」であること、「仕事の達人」への必要条件であることを、しっかりと心に収めておいてください

働き始めた君に伝えたい「仕事の基本」

江口 克彦

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経営の神様・松下幸之助の秘書から経営者になったビジネス人生で、実行し、効果のあった大切な仕事のツボ。幸せな「仕事」と「人生」を切り拓く22の指針。

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