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ワイン初心者のための、ワインのマナー基礎知識【ソムリエ執筆】

ワインを飲むとき、店員から値踏みされていると感じる人は少なくないそうです。実際、そのような目で見られているか否かは別として、あまり周りの目を気にしないためには、ある程度お酒を飲むのにふさわしいマナーを覚えておくとスマートですよね。グラスの持ち方は?注ぎ方は?ワインのマナーのポイントをご紹介します。

山口直樹(ソムリエ)

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目次

  1. ○グラスってどう持つのが正解?
  2. ○テイスティングってどうすればスマート?
  3. ○乾杯ってグラスをぶつけていいの?
  4. ○ボトルはどう注ぐべき? どう注がれるべき?
     
    ワインを飲むとき、店員さんから「値踏みされている」と感じる人は少なくないようです。飲み慣れていないように思われるのは恥ずかしいし、「この店にふさわしくない」なんて思われるのもイヤ……。
    もちろん店員さんたちは決してそんなイジワルな目で見ていませんが、お酒を楽しむにはそれにふさわしいちょっとしたマナーがあるのも事実。どうせならここでさりげなくて正しい、大人の振るまいをさくっとマスターしてしまいましょう。
    • グラスってどう持つのが正解?

      グラスは足の真ん中を持つのがマナー。さらに優雅に見せたいなら、下のほうがベストです。
      ときどきマフィアのボス然としてグラスの足を指で挟み、手のひらで包み込むように持つ方がいらっしゃいますが、あれはブランデーの持ち方。温度を上げることで、より香りを立たせているのです。
      でも、ワインをお店で飲む場合、おいしく飲めるちょうどいい温度で提供されているはずです。ブランデー風の持ち方は温度を過度に上げてしまい、おいしさを損ねてしまう可能性があります。
      ただし、頼んだ赤ワインの温度が低すぎて香りが立っていないときなど、あえて温度を高めたいときは手のひらで包み込んでも構いません。
      また、みなさんの周りには「マフィア持ちおじさん」とは別に、やたらワイングラスを回し続ける「ぐるぐるおじさん」はいませんか? 遠心力でいまにもグラスから飛び出しそうなワインを見ていると、ハラハラしてしまいますよね。あのようにグラスを回すことを「スワーリング」と言います。
      スワーリングはまだ開ききっていないワインを強制的に空気に触れさせることで、味の変化を早めるために行うものです。香りをかいで2〜3回クルクルッと回すと、かっこよくキマります。「ぐるぐるおじさん」には申し訳ないのですが、それ以降の回転にあまり意味はありません。どうせグラスを口に運ぶごとにワインは空気と混ざりますから、回しまくる必要はないんです。
      また、意外と知られていないのが「回す向き」。回しすぎたときに遠心力で相手にかからないよう、自分に向かって――つまり、右利きの場合は反時計回りに、左利きの場合は時計回りに回すのが正解です。
    • テイスティングってどうすればスマート?

      テイスティングには、2種類あります。ワインを品評するためにプロが行うテイスティングと、お店でボトルを開けるときに行うテイスティングです。みなさんがやるのは後者で、「ホスト・テイスティング」と呼ばれています。
      ホスト・テイスティングの目的は、ワインが傷んでいないか……もっと正確に言うと「ブショネ」と呼ばれるカビ臭さがないかをチェックすることです。ブショネがあったとしても素人はかぎ分けられないことが多いのですが(ソムリエも、ちょっとくらいのブショネならそのまま出してしまうこともあります)、まあ儀式のようなものですね。
      ホスト・テイスティングの起源は、毒味。自分の城に招いた人が、敵対する国の客人に「毒は入っていませんよ」と示す目的で始まったと言われています。このようなルーツを持つ単なる儀式ですから、注がれたら軽く1回スワーリングして、一口飲んで「はい、これで大丈夫です」と答えればOK。「豊かな果実味ですね」などと言う必要はありませんし、逆に「好みじゃないのでチェンジ」もマナー違反です。万が一「なんだかカビ臭い、ブショネかも?」と気になったら、「……これは、こういう香りのものなんですか?」と控えめに聞いてみましょう。
      ホスト・テイスティングは、基本的にはそのワインを注文した人が行います。ソムリエがボトルを開けてひとつのグラスにほんの少しだけ注いで出したら、それはテイスティングの合図。「たったこれだけですか?」なんて聞いてはいけません。
      ただ、ソムリエは抜いたコルクの香りからブショネでないことを確認していますから、場が盛り上がっているときなどはテイスティングしなくてもOKです。店員さんも「だいぶでき上がっているな」と思ったら「テイスティングはなさいますか?」と聞きますし、だいたい「いや、いいです」と返されます。
      わざわざ「しますか?」と聞くときは「しないと言われるだろうな」と思っているとき、というわけです。
      もう1ステップ、大人の階段を上りたい方。ホスト・テイスティングした後に、「デキャンタージュ(ボトルからデキャンタという大きめの容器に移して空気に触れさせること)したいか」と、「温度をどうしてほしいか」まで突っ込むと、かなりツウっぽいです。
      デキャンタージュするのは、開けたワインがまだ若く、熟成を一気に進ませたいとき。また、硫黄や腐った卵のようなニオイ(還元臭と言います)が強く、空気と触れさせて悪い香りを飛ばしたいときに行います。後からクルクルと何度もスワーリングする必要があるようなワインであれば、先に「少し硬いのでデキャンタージュしていただけますか?」とお願いしましょう。
      ちなみに、デキャンタージュは長期熟成させるボルドー系のワインで行うもので、ブルゴーニュ系や熟成させない早飲みタイプのワインなどは、デキャンタージュしてもあまり変化がありません。
      ワインの温度も、香りを大きく左右する要素です。せっかく店がいいと思う温度で提供してくれているのにそんな提案をしていいのかドキドキするかもしれませんが、ワインは本来「嗜好品」、つまり自分の好きなように楽しむもの。「もう少し冷やしたいと思うんですが、どうでしょうか?」と質問っぽく聞くといいでしょう。オススメできないときは、ちゃんと教えてくれますよ。
    • 乾杯ってグラスをぶつけていいの?

      ちまたでは「ワインの乾杯ではグラスをぶつけてはならない」とまことしやかに言われているそうですが、割れない程度の勢いならまったく問題ありません。ソムリエのメンバーで飲むときだって、「カンパ〜イ!」と言ってカチンと合わせます。
      スペインやイタリアの乾杯では、コップやロックグラスにワインを注いで明るく楽しく思いきりぶつけますし、ワインだからって気取る必要はないのです。皇室の晩餐会やよほどお店の格が高い場合は別ですが、お酒を飲める喜びを素直に表しましょう!
    • ボトルはどう注ぐべき? どう注がれるべき?

      ボトルを入れた場合、セルフサービスで空いているグラスにワインを注ぎ足すこともありますよね。このとき、相手が先輩であろうと社長であろうと、ボトルは片手で持つのがスマートです。ただし、女性で腕力に自信がない人は両手でもOK。安全第一ですね。
      注ぐときは口から垂れたワインでラベルが汚れないよう、上か横を向けます。ソムリエの世界ではボトルのラベルは「顔」なんです。
      お店によっては白いふきんがボトルの近くに置いてあったりワインクーラーにかけてあったりしますが、注ぎ終わったときに左手でボトルの口をすっと押さえ、液だれを防ぐためのものです。とくに赤ワインの場合は「真っ白でなんだか汚しにくい……」という声をいただきますが、ソムリエもどんどん汚します。あとで漂白剤をかければキレイに落ちますので、気にせず汚しまくってください。
      逆に、注がれるときには、「グラスが倒れないよう、下に手をそっと添える」のがマナー。ビールのようにグラスを持ったり斜めにしたり、両手を添えたりしてはいけません。

      Points!

      ●スワーリングは2〜3回転させるだけで十分

      ●テイスティングは「はい、大丈夫です」とだけ答える

      ●乾杯は、グラスをぶつけたっていい!

世界で一番わかりやすい おいしいお酒の選び方

山口直樹

ディスカヴァー・トゥエンティワン

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