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話し方(スピーチ)のコツ
話し方やスピーチで大切なのは、伝えたい思いや信念であり、流暢に上手く話すことが大切なのではなく、思いを伝えることが大切なのです。どのようにすれば、その思いを引き出し、言語化できるように導いていけるのかコツをご紹介します。
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目次
- 「話し方」(スピーチの仕方)を変える
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「話し方」(スピーチの仕方)を変える
最後に、「話し方」(スピーチの仕方)を変えることの大切さをお伝えします。それは、自分の考えや意見を持たず、発信したがらない大人を量産することを阻止しなければならないと考えるからです。そのために、もっと一人ひとりが自由に考え、発言し、お互いが高め合う空気感の教室がたくさんできたら良いと思います。それができないからSNSで匿名の誹謗中傷をしたり、議会でヤジを飛ばしたり、建設的でない言論空間が社会全体を覆っているのではないでしょうか。多くの子どもたちが学校で習うスピーチは、原稿を書いて、先生が内容や言葉遣いなどを修正し、その原稿を読むか、暗記して話すかのどちらかです。ひどい時には、先生に入れられた修正の赤ペンだらけで、自分の話したかったこととは全く違う内容になっていたという話も時々耳にします。自分の言葉で語る習慣を身につけていないから、大学入試の面接や、入社試験の面接でも、大多数は、大人が喜びそうな耳障りの良いことや、当たり障りのないことを話し、マニュアル本に書かれているような言葉を並べ立ててしまうだけになってしまいます。それでは面接で通用しないことはもとより、社会人として人と関わっていく場面でも通用しないと思います。大切なのは、伝えたい思いや信念であり、それを磨いていくことを、日頃から学校で学べていたらもっと状況は変わるはずです。紙に書いた書き言葉と、話し言葉はそもそも違います。一言一句、原稿を作って読めば、書き言葉で話すことになってしまいます。また、原稿を読めば、聴き手とのアイコンタクトも疎かになり、紙を相手に話をしているだけになりますし、原稿を暗記して話せば、自分の記憶と対話をしているだけになってしまいます。共に目の前の聴き手に思いを伝えようとしていないのですから、そうしたスピーチが力を持つはずがありません。指導をされる先生方には、是非、そのことに気づいていただきたいと思います。流暢に上手く話すことが大切なのではなく、思いを伝えることが大切なのです。その思いをいかに引き出し、言語化できるように導いていけるかが、話すことの指導だと私は思います。子どもたちは自分でも何を話したいのかわからないことがありますから、じっくりと対話をしつつ、子どもの心の中にある思いに気づかせ、それを引き出していくことが大切です。時間と手間暇のかかる指導ですが、自分の志や考えを確立するためにとても大切なことだと思います。バッカーズ寺子屋でのスピーチ訓練では、まず、ロジックツリーを使って、スピーチの骨組みを三つの柱で考えます。「今日の講座で私が感じたこと、気づいたこと、学んだことは三つあります」という具合に構成していきます。そして、スピーチのまとめとして、「つまり、一言で言うと、……ということを学びました」という感じでスピーチを締めくくります。
この三つのメッセージに共通するようなまとめの言葉をうまく抽出するのは、かなり難しいので、何度も、「一言で言うと何を伝えたいの?」ということを繰り返し問いかけて、伝えたい思いを凝縮していきます。このようにして頭の中に、話したいポイントをたたき込んで、伝えたい三つの「メッセージ」と、それぞれのメッセージを伝えるために活用する「具体的エピソード」を明確にしていくのです。
よく塾生に伝えるのは、話し方は毎回変わって構わない。ただし、伝えたい思いは変わらずに強くしていくことを意識してもらいたいということです。ロジックツリーで話の構成が仕上がってくると、今度は、3インチ×5インチの情報カードに3分間ぐらいでスピーチの骨組みだけ書いてもらいます。三つの言いたいことと、それぞれの言いたいことを伝えるために必要な、具体例(エピソード)やデータに関するポイントだけを書いていくのです。それを繰り返していく中に、話したいことの骨格が明確になり、ブレがなくなっていきます。そこまで来れば、言葉に思いが乗せられるようになります。話し方の技術として、あるいは演技として、感情を込めているように見せるのではなく、自分の心の声に耳を傾け、心のままに話すのです。スピーチトレーニングとしては、ロジックツリーが完成した時にも、情報カードが完成した時にも、全員に起立してもらい、声に出してスピーチをしてもらいます。立つことの意味は、体を自由にすることです。アイコンタクト、身振り、手振りを意識して話ができるよう、立って話すことが大切です。話が終われば座ってシナリオを修正するように伝え、私はストップウォッチを使って時間の経過を伝えていきます。それで自分のスピーチ時間も把握することができます。それから、声を出す理由は、頭の中で話す言葉と、アウトプットされた状態の言葉とでは、全くパワーが違うからです。自分自身に対しても、口に出して話していると意識が明確になっていきます。頭の中で話していると何となく誤魔化せてしまい、曖昧できちんと話せない状態のままになってしまうのです。言葉に出してしまえば、それは1回限りの大きな責任を伴うものになり、誤魔化すこともできません。だから、この言葉に出すトレーニングを重ねていけば、子どもも大人も自信を持って話せるようになっていきます。そして、最終的には、何も見ずに、人を相手に話すトレーニングを重ねていきます。なぜなら、壁に向かって話すのと、人の反応を見ながら話すのとでは、心理的に大きな違いがあるからです。自分の言葉で話せるようになると、単に話す力が身につくことにとどまらず、人生に自信が持てるようになっていきます。また、自分の意志も明確になっていきます。そうした力はペーパーテストではなくて、言語化するトレーニングで身につくものだと私は思います。書くこともそうですが、話すことも、最初は下手で良いのです。自分の思いを伝えることに、本来、成功も失敗もありません。恥ずかしく思う必要などないのです。言い間違えず、立て板に水のように話しても、何も伝わらない話だってあります。訥々と不器用に、言いよどみながら話しているのに、胸を打たれる話もあります。大切なことは「思い」がこもっているかどうかです。もう一つ大切なことは、みずみずしい心を持つことです。他人の話を聴いても何も感じることなく、自分の中に伝えたい思いもない状態で居続けることは恥じて欲しいと思います。そして、それは、短期間で改善できることでもありますから、自分と向き合い「言語化すること」にチャレンジしていくと良いと思います。話す力は、リーダーシップの力でもあります。バッカーズ寺子屋の卒塾生たちは、生徒会長や部活動の部長などリーダーになることが本当に多いです。それは、多くの経営トップにリーダーとしての考え方を学び、同時に伝える力を磨いているからだと思います。人をまとめたり、引っ張っていく上では、自分の考えと意志を明確に伝えていくことが大切です。上っ面の言葉ではなく、本物の言葉の力を身につけていくことで、人生が大きく変わっていくことを塾生たちの姿は雄弁に物語ってくれます。
学び方が変わると人生が変わる
この国の未来は、学び方の変革にかかっている! 1年間たった30日のプログラムで子どもたちが大きく成長する、バッカーズ寺子屋の教育。その教育の本質は「学び方を変える」「志を立てる」という、たったふたつのことだった──。わずか1年間でたくましく成長し、様々な世界へと道を切り拓いていった卒塾生たちの成長記録から、教育の本質を探る。10歳から15歳の子どもたち600人の人生に大きな影響を与えた「学び方改革」の実践記録。