目次
- ○「1ヵ所に固めておけばうまくいく」という思い込み
- ○現代人の「心」を圧迫する「重労働」
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「1ヵ所に固めておけばうまくいく」という思い込み
さて、「仕事の渋滞」=「仕事がたまる」状態は、人の「心」の働きにとても強く関係していることを述べました。さらにここでは、仕事をためてしまいがちな人が抱いている「幻想」を壊していきましょう。その幻想というのは簡単で、ありきたりなものです。つまり 「仕事をためて、ヒマがあるときにイッキに片づけることができる」という幻想です。たとえば、「メールの受信トレイに1000通の未読メールがたまっていたが、あるときそれをイッキにゼロにできた!」というような「成功体験」がある人は、「仕事は1ヵ所にためておけば、イッキに片づけられるのだ!」という間違った幻想を抱いてしまいます。プライベートでも、「家族サービスはゴールデンウイークにまとめてやれば十分だろう!」というような発想を持つことで、かえって自分の首を絞めてしまうという人がたくさんいます。毎週、1時間くらいでよいので、子どもをちょっとしたスポットに連れて行ってやればいいのに、それをサボってしまう。そのかわりに大型連休をまるまる渋滞の中ずっと車を運転し続けて、「イッキに」家族サービスをしなければならなくなるのです。仕事を1ヵ所に固めておくことが、つまり計画を立てるということであり、それを時間があるときにイッキに片づけるのが、基本的な仕事のやり方だ、というのは、今のような時代にはとても無理がある発想なのです。この発想は、実は「今のような時代」でなくても無理があったのですが、21世紀になってからはいっそう無理になってきました。その理由をここで簡単に説明しておきましょう。 -
現代人の「心」を圧迫する「重労働」
ITが仕事場に持ち込まれるようになってから、私たちのまわりで劇的に変わったことがあります。それが「仕事の増え方」と、それに対する「防御の仕方」です。今の時代、仕事はものすごい勢いで急激に増え続けます。しかもそのかなりの割合が、昔であれば「やってもやらなくてもいいような仕事」なのです。これはたとえばメールという単純なツールのことを考えてみればすぐ分かります。IT時代の前には、メールというものはありませんでした。今やそのことを想像もできない世代が生まれてきていますが、たしかに当時は仕事を依頼するとなったら、電話もしくはFAXを使う必要があったのです。電話をかけたり、FAXを送ったりするのは、間違いなく時間がかかるし面倒なものです。少なくともメールよりははるかに面倒です。それに一度に同時に受信できる数にも制約があります。だから仕事は驚異的な速度で増え続けたりしなかったのです。電話のことを考えてみるとすぐ分かります。今でも電話で仕事を依頼するという人はあるでしょう。電話は、誰かが言葉で応対しなければなりません。留守番電話にメッセージを残すということもできるのですが、意外にそのやり方は普及しませんでした。ですから依頼される仕事というのは、電話がかかってこなければ、増えることはなく、仮に電話がかかってきても、受けたくない仕事はそのつど断ることが簡単にできました。メールはそれとは違います。メールは受信トレイにたまります。ちゃんとした仕事の依頼だろうと、スパム同然のメールだろうと、どんどんたまっていくのです。送信する方もとても簡単に送れます。こうしてまず、「未読のメールをチェックする」という、以前にはあり得なかった仕事が急速にたまるようになっていきました。未読メールをチェックするというただそれだけのことですら、1000件もあれば十分な「重労働」になってしまいます。また、未読のメールをチェックしたところで、それが本当にちゃんとした仕事かどうかは分かりません。このような「重労働」はITが登場する以前には、そもそも1秒も時間をかける必要のなかった「仕事」なのです。
仕事の渋滞は「心理学」で解決できる
第1章 「仕事の渋滞」の原因は「心」が9割より
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