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- ○「間」は上級テクニックではなく会話の基本の「き」
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「間」は上級テクニックではなく会話の基本の「き」
そもそも「間」とは何でしょうか。広辞苑第六版によると、「間」とは「物と物、または事と事のあいだ」「あいだの空間」「あいだの時間」「芝居で、余韻を残すために台詞と台詞との間に置く無言の時間」のことです。「間が悪い」「間が抜ける」「間が伸びる」という否定的な言葉があるように、「間」を使ってタイミングよく合わせるコミュニケーションを、日本人はよしとします。「間」は、言葉のない余白の部分。私たち日本人は、余白で心情を表現することができるのです。日本の話芸の一つ「落語」でも「間」が重んじられています。落語の名人は、たとえ話を知っている古典落語であっても面白く聞かせます。「間」を使って観客と息をあわせ、聞き手と話し手の感情を共有します。「お笑い」にも「間」が重要。ビートたけし氏も「お笑いを制するには〝間〞を制すること」とおっしゃっています。さらに、「映画や絵画や音楽といった芸術、野球やサッカーや相撲といったスポーツ、踊りや茶道といった芸事、そして人生にいたるまで、あらゆるジャンルにおいて、〝間〞というものは決定的に重要なもの」と指摘しています。たしかに、舞台や芝居も幕間をつくって区別します。「のべつ幕なし」というひっきりなしの状態は好まれません。住宅でも「間」が重要な役割を果たしています。広い空間に間仕切りを設けることで空間を作り出します。建築家の隈研吾氏は建築とは「内部と外部のあいだに、ある境界を設けるもの」として、日本人は「ぼんやりとした境界」を好み、「ぼんやりとした場の豊かさは、『あいだ』などの日本の伝統的な空間観につながっている」と評しています。「間」とは、外国語に訳せない日本独特の概念でもあります。比較文学者の剣持武彦氏は「間」について、「日本人にあっては『間』という概念が、空白な状態とか、あるべきものが欠落した状況をいうのではなく、むしろ、積極的に創造されたものとしての『間』である」としています。このようにお伝えすると、つまり「間」は芸達者な人が得意な感覚的なもの。だから身につけるのは難しいと思うかもしれません。そんなことはありません。剣持氏が指摘するように、「間」はとるものではなく、意図的につくるものです。聞き手の反応を見ながら「間」をとるのではなく、「聞き手に反応してもらいたい場面」で、積極的に自分から「間」をつくるのだ、と考えてください。頷いてもらいたい場面で「間」をつくる。考えてもらいたい場面で「間」をつくる。これだけでいいのです。「間」はいわば、話し方のターボエンジンです。手漕ぎでボートを漕ぐのは大変なものです。力を使ってヘトヘトになるし、時間もかかります。これが、「間」のない話し方です。しかし、ボートにターボエンジンをつけたらどうでしょう。あっという間に向こう岸にたどり着けます。最短、最速で、最高の結果を出せるのが「間」を使った話し方なのです。今まで学んだ話し方で効果が出ない方は、「間」を加えるだけで結果を出せるようになります。「間」はすべての話し方スキルに通用する、「基本のき」。そして「最高の話し方」のための必要条件なのです。
たった一言で人を動かす 最高の話し方
2 章 「間」をとれば「最高の話し方」になるより
「なぜ、あの人が話し出すと 聞き入ってしまうのだろう?」あの起業家、政治家や一流企業の幹部も実践中!NHKキャスターとして17年活躍し、現在は5歳から80歳まで31,000人の話し方を劇的に向上させた著者だけが知っている、成功を勝ち取るスゴい話し方!「雑談」「プレゼン」「挨拶」「営業トーク」「結婚式のスピーチ」「初デート」といったどんな時でも対応可能!仕事も人間関係も「話し方」次第で劇的に変わる、最短、最速で最高の結果を出す究極のコミュニケーション術をお届けします。